リレーコラムについて

手相のゆくえ

小野麻利江

前の局長のYさんは、
手相を見ることができるということで、
部署内でちょっと有名でした。

(もっぱら女の子の手相しか見ない
という話でしたが、それは置いといて)

当時私は、クリエーティブなりたて。
話をする機会はそれまで無かったのですが、
もうじきYさんが部署を移られるということがわかり、
せっかくなので一度、手相を見てもらうことにしました。

西日のさす局長室。
ブラックコーヒーをすすりながら、
Yさんは小声で、手相見をはじめました。

結果、
「君は運がいい」とか

「モテる」とか
※あくまで個人の感想です

「40歳すぎても地に足がついてないだろうね」とか

「コピー年鑑の中で好きなグラフィックを見つけたら
コピーをとって、机の中にしまっておきなさい」とか

まあ色々と、コメントをいただいたんですが、
(最後のは占いじゃなくて、単なる教育的指導じゃないか)

Yさんは話の最後に、
ニヒルな笑みをうかべて、こう言いました。

「まあどうなるか、わかんないわ。
お前まだ、手相が固まってないから」

うやむやにするのが(恐らく)得意な
Yさんらしい締め方だったと思うのですが、

そう言われて、自分の手相がたしかに
他の人より薄いことに気がつきました。

そしてそれは、手相の世界(?)では
「まだ人生が固まってない」ことを意味してるっぽい。
そのことにも、軽くショックを受けた私でした。

あれから3年。
昨晩、深夜のデスクで企画につまった私は、
ふとパソコンのキーボードを叩く手を止め
手のひらを見つめてみました。

Yさん。手相が、濃くなりません・・・

さて来週のコラムは、
電通5CRの太田祐美子さんにお願いしました。

ふんわりしているのに芯が強くて、
小説と音楽と中目黒の香りがする、すてきな先輩です。

こういう人に生まれたかった・・・と、
会うたびに本気で思います。

自分の薄―い生命線が途切れた先に、
「生まれ変わったら太田さんになれる線」を
書き足そうとしながら、
私のコラムは、これで終わろうと思います。

1週間、どうもありがとうございました。

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