リレーコラムについて

死合う

林潤一郎

お侍さんが大好きです。
小学校6年生の夏休みの作文は近藤勇白書です。
燃えよ剣を読んでからは、土方歳三の方が好きになりました。
京都に行った修学旅行では、
新撰組の、だんだら模様のハッピをお土産に買いました。
雨あがるは2回見て、2回泣きました。
最後のシーンが秀逸です。
さぶは本でも映画でも泣きました。

泣き虫な僕(2日目のコラム参照)の目には、
お侍さんの生き様がとても格好よく映ります。
言い訳がましくなくて、強くて、やさしい。

そうそう。小さな頃から、ストイックな人に惹かれる傾向があります。
高校生くらいまで座右の銘にしていたのは、野口英世の真似して堅忍不抜。
ずいぶんませた子どもです。
(大学生になると、Stay Kidsになります。チャラいです。1日目のコラム参照)
だから、ミスターストイックの異名を持つ小比類巻選手も好きです。
僕の方が先にその名前を襲名していましたけど。

話を戻しましょう。
今日のタイトル、死合うは、そんなお侍さんたちの、
漢(おとこ)の中の漢(おとこ)道をいちばん表しているものだと思います。

諸説あるとは思うのですが、僕が知っている意味は、こうです。

決闘。つまり、私闘が暗に許されていた時代(公式には御法度)、
漢たちは真剣を持って向き合いました。己の意地と誇りを掛けて。
よく手入れされた刀は、少し触れただけでもスパッと怪我をしてしまうくらい、
恐ろしい凶器であったに違いありません。

危ないですよね。
危ないどころか、間違いなく死にます。
テレビのチャンバラみたいなことにはなりません。
カキーン! カキーン! と、長尺でやり合えるほど生温いものではないのです。

一瞬。

ほぼすべての私闘が、相打ちだったと言います。

私闘を申し込んだ側にとって、相打ちは勝利。
だから、意地と誇りを掛けて、自分の命で相手の命を奪う。

死に合うの語源だそうです。
今となっては、試し合うになりましたが。

僕はこの話を知ったとき、
北方謙三のハードボイルド小説の一説を思い出しました。
日本一カミソリに近い文章を書く、北方謙三のあの一説。

光。

主人公が、ナイフで襲われるシーンです。
余分な物はありません。いさぎよすぎです。
だって、小説なのに一文字なんですから。

こんな漢たちの生き様を、僕も真似てみようと思いました。
ガーリーな僕でも、まず、できることから。

合コンを死合いと呼ぶこと。
見ず知らずの男女が、互いの命をかけて狭い個室で対峙する。
思わず息をのむ自己紹介のフリ。まるで道場破りまがいの出稽古。
かわいい女の子がお手洗いに至った瞬間、気配を消して後を追う。
まるで闇討ち。(あ、これは正々堂々としていないなぁ)

とにかく、死合いと呼んでも何ら支障のない、現代の私闘です。

近頃、この現代の私闘、合コンでだらしない男子が増えたように思います。
自分を美化したいのか、やさしいアピールでもしたいのか、
ろくにお酒も飲まず、小鳥のごとくおしゃべりする輩。
許されぬ行為です。

黙ってイッキ。酔ってピエロ。メアド交換禁止。
じゃあまたね〜、じゃない! 帰りの電車からメールして口説くな!
これは死合いだぞ。命で命を奪うんだ!
かわいいこの眼前でその生涯を終えることができるなら、いいじゃないか。
立派な死に様を残せるじゃないか。
作り物の自分を好いてもらって、何になるというんだ。

・・・ごめんなさい。
僕が、勝手にイッキして、つぶれているだけです。
その隙に、楽しく飲んでいる皆に嫉妬してるだけです。

合コンは、死合いだ!
この提唱に賛同してくれる方は、
Mail:um101707@r.recruit.co.jp までお便りを。

(訂正:2日のコラムで紹介した村上春樹の小説は、『風の歌を聴け』が正しいものです。“聞け”ではありませんでした。)

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