リレーコラムについて

コピーライターになるまでも遠回り、なってからも遠回り 第4話

山内弘基

コピーライターになって4年がすぎた頃、
あろうことかこの私があるコピー講座の講師をすることになりました。
まだまだダメ出しをされることも少なくはない私に、
ダメ出しされてしまう受講生たち。
それって、ダメダメになってしまわないか!?
ところが、その受講生たちは、そんなにヤワではなかったのです。

この講師、ダメじゃん。
面と向かって言われたわけではないのですが、
当初20人以上いた受講生たちが、
あれよあれよという間に半分くらいに激減。
うーむ。確かに教え方に問題はあったのでしょう。
当時「広告大入門」といって広告学校の講義を
1冊にまとめた便利な本がありました。
その中から暗記しやすいモノを選び、ほぼその内容を話したのです。

まぁ、さすがに自分が考えたものとして講義するのは良心が痛む。
(良心があるなら、そもそもそんなことしないだろ!)
なので、仲畑さんはではなく、仲畑さんもこう言ってる。
谷山さんもこう考えてる。つまり、「は」を「も」にすることで、
トップクリエイターも、目の前にいる怪しい講師もどきも、
偶然同じ意見にいたってるということにして講義をしたのです。

けど、そんなもん、バレバレでした。
それでもなんとかその受講生たちは卒業。
おそらくどこにも就職はできなかったとは思いますが…。
それって怪しい宗教にだまされて、
お金を巻き上げられた信者たちに似てないか。

まぁ、半年の経験が次には活かせるかと思っていたら、
より過酷な現実が待っていました。
次の受講生応募が、なんと5名。
こればやばいです。こういのって必ず2〜3回目あたりで
数人はやめていくものなんですね。
案の上、すぐに3名が残るのみとなってしまいました。
マンツーマンを売り物にしていないのに、ほぼマンツーマンな講義。
これって逆手にとってセールストークにできないか。
できるわけもなく、さらに恐れていた“空白の一日”
いや“空席の一日”がやってきたのです。 

3名でも続けてくれる人たちは、やる気はあるわけです。
けど、それでも仕事や家庭の都合でこれない日もある。
そして、わずか3名だとそれが重なる日もある。

いつものように5分遅れで教室に向かうと、なにかいつもと違う様子。
暗いのです。部屋の中が真っ暗なのです。誰もいないじゃん。
部屋の灯りを自らつけてまわり、待つこと30分、
さらに30分。1時間たったところで、トボトボと事務局へ。
「あのー、生徒が誰も来ないんですけど」
事務局の人はあわれむように私を見て、
「では今日は休講ということで」と答えました。
休講って、フツー講師の方から起こすアクションではないのか。
生徒によって休講に追い込まれ、
教室の電気を消し、戸締まりまでしてしまう私。

そして半年後、そのカルチャースクールから
コピー講座がなくなりました。
(いよいよ最終話に続く予定)
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