リレーコラムについて

いじわるチャーミング〜黒須さん〜

東畑幸多

私が仕事を一緒にして勉強になった人を紹介する、第3弾。
今回は、シンガタのクリエーティブディレクター「黒須さん」です。

黒須さんとお仕事をご一緒させていただいたのは、今から3年前くらいのこと。とある通信会社のCMで、黒須さんの下、CMプランナーをやらせていただきました。

当時、私は新人賞をいただいたばかりで、まだコピーライターをやっていました。ただ、だんだん自分の中で、職種に関係なく、もっとアイデア全般を考えたい。CMでもコピーでもどちらもやりたいという欲求があり、当時の上司にも、CMプランナーの仕事もしたいと常に訴えていると、「CMプランナーが外れた仕事があって、空きがあるけど、やってみる?」と言われたのがキッカケで、ラッキーにも黒須さんの下につくことができたのです。

ただ、本当にコピーライターとして、CMは企画はしたことがありますが、今回は、純粋にCMプランナーの立場として参加する。しかも、黒須さんがCD。そして、何人かCMプランナーがいるものだと思ったら、いきなりメインプランナーのような立場で、しかも下に一人後輩をつけられたりして、むしろ一人よりやりづらいような状況でした。

黒須さん自体、まだ電通にどんなスタッフがいるかも、よく分からない頃だったのだと思います。しかも、私のような「CM作ったことがない」スタッフを、電通の中でもかなり大きな仕事のCMプランナーをまかせるとは夢にも思っていなかったことでしょう。ただ、仕事を進めていく中で、きっと「あれ?この人、大丈夫?」と思うようなことは多々あったと思います。ろくに企画をまとめることすらできなかったのですから。

とにかく最初の頃は、黒須さんが何をいってるのかすら分からないことも多く、黒須さんが別件の打ち合わせに出た後、明日プレゼンだけど、で?コンテどうしよう?と途方にくれて、コンテライターの人に企画まで相談しながら、とにかくカタチにして黒須さんを待つ生活が続きました。ただ、意外だったのは、黒須さんが、けっこう自分のことを尊重してくれるというか、まかせてくれるというか、忙しかっただけかもしれませんが、出来上がったコンテをみて、全部とはいいませんが、いくつかオッケーしてくださって。それが、ものすごく自信になったことを覚えています。(まぁ、プレゼン当日の朝とかに見せていたので、修正する時間もないから言いようがなかったとは思いますが、、、)

黒須さんは、CDでありながら、きちんと企画までされる、CMプランナーとしての一面も持っておられます。黒須さんに色々と企画を見せながら、黒須さんがまとめあげ、カタチにしていくのを見ていて、勉強になったことは、「行間がもたらす、面白さ。」逆に言うと、「分かりやすいことのつまらなさ」です。

黒須さんの企画というか、セリフまわしとか、あと黒須さんが反応する企画を見ていて、一番最初に感じたのは、岡崎京子さんのマンガをはじめて読んだときのような感覚。セリフや面白さの質が、ここがオチで、ここでギャグを言います。といった単純なものでなく、人物と人物の会話のあいだにある空気というか、そのセリフで、その人物の関係が垣間見えてくる面白さ、全部を分かりやすいオチでまとめるのではなく、余韻を残すことで広がりとか深みを感じるというか。分かりやすいものではなく、気になる感じのもの。

自分は、どこかでロジカルに考えながら、あと「ここが面白いです。ここで笑ってください。」とか、ここでアホなことでボケます。みたいな、とても単調な面白みしか作れないので、あの黒須さんの独特の面白み。人物の描き方だったり、キャラの設定だったり、そしてどんな一言を言わすかのセンスみたいなものは、一番マネしようとしても難しいのですが、でも、CMはそういった面白みをつくることができるということを知ることができただけでも勉強になったと思っています。

激しい映像や、変わった設定がなくても、逆にふつうの日常だからこそ、ちょっとした一言でサスペンスに変わってしまったり。黒須さんと仕事をしてから、それまでまったく読まなかった女性の作家や漫画家の作品を読むようになりました。

これ書いていいのかよく分かりませんが、分からないので書きますが、黒須さんの作品集を借りてみていたときに、黒須さんがかつてやったある飲料のビデオコンテが入っていて。それが、素晴らしいんですよね。ひょっこりひょうたん島の歌がながれ、次々といろんな女性のシーンがインサートされるビデオコンテ。セリフはなかった気がするのですが、その歌と映像選びのチョイスなのか、女性たちのつぶやきが聞こえるような、チャーミングなんだけど切ない。すごく心ひかれる世界で、今まで見たビデオコンテの中で、ダントツで好きな作品です。

黒須さんみたいな表現がもっとたくさんでてきたら、CMというか、日本の広告は、もっと豊かなものになるのにな、と思っています。
(いつか、一度くらい、そういったもの作ってみたいなと思ってます。)

余談ですが、黒須さんからもうひとつ影響を受けたのは、その生き方というか。黒須さんの立場といか、スタンスって、自分にとっての理想に近いなと思います。あの年齢で(すみません)、現場にいつもいて、常にアンテナをはって、新しいことにトライしていて。生涯、CMプランナーである姿は、本当にうらやましいです。黒須さんと同じ年のころに、ああやって企画を考えていられたら、本当に幸せだなと思います。

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