リレーコラムについて

10年後の採点

澁江俊一

1997年、22歳の大学生だった僕は
コピーライターになろうと決めてバイト代を注ぎこみ
宣伝会議コピーライター養成講座に通っていました。
その頃毎週出される講師からの課題とは別に
「一日一コピー」という練習を自らに課していて
何でもいいからコピーらしき言葉を一日一個毎日書く、書くまで寝ない
というルールで約半年つづけていました。

今日は念願どおりコピーライターになった自分が恥を覚悟で
10年前の「一日一コピー」のうちのいくつかを
10点満点で採点&批評してあげるという企画にします。
正直言ってコピーになってないものがほとんどな上、
具体的な商品をイメージしてないのでわかりづらい(というかわからない)
ものもたくさんあります。コピーライターになる前ということで許してください。
では行ってみましょう。

●自分の気持ちを、みんなの言葉で。

自分のためのコピーです。コピーを書く指標として書いたものでした、確か。
自分が感じたことを、みんなにわかる言葉で書くのがコピーライターの仕事
と教わったときに、その気持ちを素直に書いたものです。
今でもこういう指標で書いてる気がします。5点

●目が覚めたら、まだ夢だった。

ぐっすり眠れる商品(ベッドとか枕)をイメージして書きました。
深く眠るとこういうことも起こるかなと。3点

●有名になることが人生の目標なんて、ちいさいなあ。

これも自分コピー。有名になることが人生の目標だったのも当時の自分です。
こういうふうに自分を否定する視点が当時、僕のブームだったので。4点

●マイルドで行こう 

ステッペン・ウルフ「ワイルドで行こう」のパロディです。
イージーライダーはすごく大好きな映画なのですがあの主人公みたいになりたい
けど僕のキャラでは無理!とあきらめてこういうコピーを書きました。2点

●地震だと思ったら二日酔いでした。

二日酔いのときに飲む医薬品をイメージしたコピー。
ひどいコピーです。かなり酔っ払っていたのでしょう。0点

●ずっと覚えておくいちばんの方法は、忘れることです。

バカボンのパパの「忘れようとしても思い出せないのだ」という名言を
意識して書いた記憶があります。当時はけっこう深いなあ〜
と悦に入っていたのですが今見るとたいして深くもないですね。4点

●仮面から人を取ったら反面だ。

一見おっ!と思わせつつ実は何も言ってない。ただの言葉遊びです。1点

●弱点のある人が好きだ。

今でもそう思っています。
自分にも弱点がたくさんあるので嫌いではありません。5点

●彼はおしりで考える。

かなりのインパクトですがさっぱりわかりません。何が言いたかったのでしょうか?
頭で考えるなってことかなあ?ぜんぜん覚えてないや。彼って誰?6点

●速く走るより
 歩きつづけるほうが
 遠くへ行ける。

ウサギとカメですね。3点

●ダメージを愛せるなんてジーンズくらいだ。

お気に入りのジーンズを直しに行ったときに、
「たくさん穿いてくれてありがとうございます」とお店の方に言われ
妙にうれしくて書いたコピーでした。4点

●人生を同時通訳してください。

これもまったく思い出せない。同時通訳?人生を?なんだそりゃ。
10年前の自分を問いつめたいです。でもこういうメチャクチャさに7点

●もういちど、なんにもしらないひとになりたい。

図鑑などの知識系の商品をイメージして書いたものです。
あえて全部ひらがなにしているところが若造。4点

●いま、女の子に必要なのは男らしさです。
 いま、男の子に必要なのは女らしさです。

これからはユニセックスのファッションショップが増えるんじゃないか?
と思いついて書いたコピーだったような気がします。3点

●バカなこと
 いいかげんにやるから
 バカに見える。

自分コピーです。いまだにこれ、結構好きなんですよね。8点

●すでに過去のほうが新しい。

昔の映画(「仁義なき戦い」だったと思います)を観て書いたコピーです。4点

●一生の思い出って、いくつあればいいんだろう。

青春18きっぷをイメージして書きました。これも割と好き。6点

●ワラリーマン。

笑う+サラリーマンの造語だった気がします。意味不明。6点

まだまだありますが、このへんで。
当時を思い出しながらやや甘口につけてみました。
でも採点しながら笑ってられなくなりました。
10年前の僕が10年後の僕の仕事を見たらどう思うんだ?
笑われるのは今の僕のほうじゃないのか?

がんばろう。

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