リレーコラムについて

すべては了見の問題

中村直史

いままでで一番悩み、一番書いたコピーは、娘の名前な気がします。
田舎育ちなせいか、画数も気にしましたし、
自分の親も、妻の親も気に入ってくれるものじゃないと
イヤだったし、まあさんざん悩みました。

最初にこれでいこうと考えたのが、海月と書いて「みづき」。
切迫早産の気があり、急きょ入院した妻のところへ向かう
夜行フェリー(ぼくと妻の実家は九州のとある島)から見た
海に浮かぶ月があんまりきれいだったのでいいと思ったのです。
ちなみに海月と書いて「くらげ」とも読むんですね。
ふだんはひょうひょうと世間をただよい、
気軽に近づくやつ(男)はピリッとやっつける。
そんな意味でもいいんじゃないかと。

妻は気に入りました。次に私の母に
「名前、みづきにしようと思うんやけど」と告げると、
突然「わたしは濁点のついた名前は好かん!」と叫ぶのです。
ア然としましたね。
だって、ぼくの名前「ただし」なんですよ。
なのに、「濁点のついた名前は好かん!」ってなんだ。
この人は、ぼくの誕生以来、ぼくの名前が不満だったのか。

よくよく聞けば、自分の孫となる女性に
濁点のついた名前をつけてほしくないらしく、
そこには、個人的な深い訳がありました。
ぼくも納得し、他の名前探しがはじまりました。

結局、千結(ちゆ)という名前をつけました。
お前の前には幾千もの奇跡的な人と人の結びつきがあって、
だからお前にはちゃんと生きていく責任がある
というような意味を込めてだったのですが、
親類だれもが気にいってくれたし、画数もよいし、
娘に対してぼくが言える唯一の教えのような気もして、
もうこれでいつ死んでも思い残すことはない、
くらいの気分でした。

が、名前を役所に届けてから何日か後、
自分が読んでたのと別の画数の本をながめていたら、
そこにネガティブな言葉が連ねられてあるのです。
画数も、流派が違うと言うことがぜんぜん違うんですね。

だれもが祝福してくれた名前に傷をつけられたようで
猛烈に腹が立ちました。どうしようもないから、
本のそのページにさんざん赤字を入れて、
娘の人生をバラ色のものに変えました。
赤字を入れるのは職業柄得意なのです。

それにしても画数の本というものは、たちが悪いです。
人がすごく気にすることを書いておいて、その巻末には
「名前鑑定、○○円にてうけたまわります」なんて書いてある。

ここで今日のタイトルにやっとこさつながるんですが、
そういうのを了見が悪いって言うんだと思います。
はっきりと理屈で説明できないけれど、人としてどーなの
というようなモヤモヤさを感じさせる何か。
世の中の問題は、すべて了見の問題なんです。
と、最近強く思います。単に落語の見すぎかもしれませんが。
でも、いい了見が大事です。人は顔じゃない、了見です。
広告づくりも了見です。

さあ、ここからぼくの了見論(具体的には了見と世間について)
を延々と語りたい所ですが、だれも聞きたくない気がするので、
またいつかリレーコラムがまわってきた時のためにとっておきます。

そして、コラムのバトンを、了見の良さではぴか一の
荒木伸二さんに渡したいと思います。
プランナーってなんとなくの仕事ではないんだと
ぼくが始めて知った、尊敬する人です。

読んでくださった方、ありがとうございました。
特にわざわざメールをくれた芳谷さん、岡田さん、山本くん。
あなたたちには信じられないくらいの幸運が訪れることを
確信しています。では、みなさんまた会う日まで。

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