リレーコラムについて

夢の仕事 最終回

柴田常文

 その人は、何度選考を重ねても、必ず残った。
その人の写真を見ると、男も女も、みんな溜め息を
こぼしながら、「いいよなあ」、「いいですよねえ」と言う。
「でも、無理だよなあ・・」と。

 某精密機器メーカーのカラーコピーキャンペーン。
コピーの美しさを実証するため、カラーコピーでそのまま
写真集を創ってしまおうという企画だ。
いったい誰の写真集にするのか?洋の東西を問わず、
捜しまくった。誰もが美しいと思う人。
この世でいちばん美しい人・・・。

スタッフの結論は、その人だった。でも、
その人は、もう、この世にはいない人だった。

夏目雅子。

「亡くなった方を広告に起用するのは、如何なものか?」
「ご遺族も、そっとしておいて欲しいはずでしょう」
「我が心のファンも、たくさんいるはずだし・・・」
いろんな、もっともだ、という反論が出された。

でも、BUT、しかし、されど、
どーー考えても、この企画は、彼女しかいないと思った。

我々の主旨を、お母様は、やさしくご理解してくださった。
急性白血病で亡くなった夏目さんの意志を継ぎ、
お母様は、白血病で戦う女性のために、カツラを貸出する
ボランティアをなさっていた。「夏目雅子ひまわり基金」。
このキャンペーンの協力費をすべて、お母様は、
この基金のために寄付なされた。

音楽は、松田聖子の「あなたに会いたくて」。
生前親しかった彼女は、「雅子さんのために私の歌が
お役に立つなんて、聖子ウレシイ!」と
即、OKしてくれた。この歌は、結果として、
彼女初のミリオンセラーを記録した。

かずかずの広告賞も受賞したが、賞金をすべて
「ひまわり基金」に寄付させて頂いた。
このキャンペーンで、この基金のことが知られ、
全国からたくさんの寄付金が集まったという。

いろんな広告キャンペーンを手がけてきたが、
このような社会的反響を巻き起こすことができると、
ン、もーーー仕事冥利に尽きるのであります。
一度やったら、やめられない、のだなあ(シミジミ)。

さて、私のコラムも、今回でオシマイです。
毎日読んでくれた奇特なお方には、このページを借りて
厚く、厚く、さらに熱く、御礼を申しあげます。

来週から、バトンタッチしてくれるのは、
岡部正泰 巨匠!
才気あふれるコラムが期待できるでしょう。おタノシミに!

では、みなさん、さよなら、サヨナラ、エーゴでも、
SAYONARA!です。            完

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