リレーコラムについて

gian/1993

佐藤司郎

こんにちは。
笹島さんから指名を受けた佐藤司郎といいます。
えーと、今月で会社を辞めるので、
ちょっと感傷的な文章になりそうです。
お許しください。

10年前。僕は26歳でした。
せっかく入ったスタンダード通信社を辞めてしまい、
アルバイトもせず、友人の家に棲みついていました。
毎日、昼過ぎに起き、バイクにまたがり、海にばかり行っていました。
週に2回はバンドの練習。月に1回はライブハウスで演奏していました。
お金がなかったのですが、まったく働く気になれず、
身の周りのものを売り、活動資金をつくりました。
電話の権利。CD、ビデオ、本、革ジャン。身軽になりました。

バイクに乗ってギターとワープロを抱えて
友達の家を転々としているうちに
夏が去り、みんなが文句を言い始めました。
おまえもいいかげん、アルバイトぐらいしろよ。
もっともな忠告でした。

仕方なく、新聞の折り込みチラシで見つけた
工場でアルバイトすることにしました。
精密機器を組み立てる工場です。
静電気を防ぐために真っ白な服を着て、マスクをして働きました。
すぐに嫌になり、さぼってばかりいたら、
1か月でクビになりました。でも20万円ほどバイト料を貰えたので、
これで半年は暮らせると安堵しました。

しかしお金はすぐになくなり、
遂に一枚1700円のチケットを定価で友達に売るようになり、
それを生活費にあてました。普通は友達にはタダであげたり、
500円くらいで売るのですが。
そういえば某大企業に勤めていたHくんは
2000円で買ってくれました。
Aくんは、僕のバンドのライブに必ず来てくれましたが、
定価でチケットを買わされた彼は、
密かに「ジャイアンリサイタルがまた始まるぜ」と悪口を言っていたようです。

わけのわからない日々でした。海ばかりみてました。
時間だけがやたらとありました。
あの頃にくらべたら、いまは少しお金があります。
でもあの頃の根拠のない自信や、余りある時間は何処かに消えてしまった。
そして僕は最近、海をみていません。

佐藤司郎の過去のコラム一覧

1069 2003.12.26 music is over?/1997
1068 2003.12.25 home/1996
1067 2003.12.24 ice/1995
1066 2003.12.23 (/1994
1065 2003.12.22 gian/1993
NO
年月日
名前
5691 2024.04.20 長谷川輝波 #マイナス5キロジーンズ@韓国の街中
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