リレーコラムについて

1番短い物語

荻原 海里

就活生の頃、漫画の編集者になることを目指していました。
その根本には物語に関わりたいという漠然としているけれど強い思いがあって。
編集者になれなかったら、映画のプロデューサーか、テレビ局でドラマを作りたいと思っていました。

そんな僕を広告業界に導いてくれたのは、
ランチをご一緒させていただいた広告代理店に進んだ先輩の
「広告コピーは世界で1番短い物語だよ。」
というひとことでした。

その一行から壮大な背景が垣間見えたり、その先にブワッと景色が広がる感覚。
広告コピーには、確かにこれは物語だと思える言葉が溢れていました。

僕の肩書きはコピーライターではなく、アクティベーションプランナーです。
言葉を描くことよりも、企画を考えることを生業にしてきました。
僕は企画を考えることもとても好きです。
4、5年前までは打ち合わせにコピーを持っていくことはほとんどありませんでした。

ある年、たまたま受賞できた新聞賞にものすごく手応えがありました。
崩れたケーキのビジュアルに
「スキップしちゃった。」というコピーを添えた
ケーキを持ち帰る喜びを描いた、コージーコーナーさんの広告。
「これは俺には作れない。」「海里らしさがとても出ている。」
そんな感想をいただけたのは、生まれてはじめての経験でした。
その日から、コピーも書いてみたい。書けるようになりたいと思うようになりました。

でも、企画をやめることはできない。企画をやめることはしたくない。

そのためには、人の2倍考えるしかありませんでした。
企画も出す。コピーも出す。全部考える。
打ち合わせで一番おもしろい企画を。
コピーライターよりもいいコピーを。
たとえ時代と逆行していても。
自分がやりたいんだから、頑張るしかない。

僕は明日も、そんな風にして打ち合わせに臨みます。

コピーライターではなかった僕に、
お前はコピーを書くべきだと言ってくれる営業さんがいました。
このコピーはお前に任せると言ってくれるCDが、
あなたのコピーのおかげで絵が良くなったと言ってくれるADが、
そして、このコピーでいきましょうと言ってくれるクライアントの方がいました。

新人賞を受賞し、みなさんに報告のお電話ができた瞬間が、
この賞を受賞できて最も嬉しかった瞬間かもしれません。

この仕事は、否定との戦いだと思います。
打ち合わせで、プレゼンで、世の中で。
そこにたどり着くまでの労力や時間はなかったことにされ、
面白くない。正しくない。らしくないと否定される日がほとんどです。

でも、答えは確かにあるんだと思う。

今回いただけたこの賞に背中を押されて、
今までよりも少しだけ自分を信じて進んでみようかと思います。

 

 

1週間、本当にありがとうございました。
「今しか書けないことを」ということだけがテーマでした。

 

来週は博報堂の角田奈菜さんに繋ぎます。
言葉に対する責任感がとても魅力的な人です。
よろしくお願いします。

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