リレーコラムについて

「家族in畑」

照井晶博

やっぱり5回書かないと

終われない気もしたので書く。

 

 

2回目の「派閥」で、井村派に入った話を書いた。

コピー顔の話から

「井村派になる?打田派になる?」と聞かれて、

すかさず井村派を選んだ話は書いた。

でも、なぜそのとき井村派を選んだのか。

ちゃんと書いて今回のリレーを終わらせようと思う。

 

1993年のある日、ぼくと、

同期のCMプランナー岡田くんは、

永谷園のチームに入った。

それは「煮込みラーメン」という新製品のCMの仕事。

鍋で野菜といっしょに煮込んで食べるラーメンで、

「野菜がたっぷり食べられる」というのが訴求ポイントだった。

パッケージには和田アキ子の顔が

イラストとなって鎮座ましましている商品で、

当然CMタレントは和田アキ子。

CDは水原さん。そして、プランナーは井村さんだった。

 

自分がどんな企画を考えて持っていったかはもう覚えていない。

が、そのときの井村さんの企画はよく覚えている。

 

「家族in畑」

お父さん、お母さん(アッコ)とこどもが

野菜畑の真ん中で鍋を囲んでいる、

というシュールな画からCMははじまる。

お母さんがこどもたちにつぎつぎ指示を出す。

たとえば「◯◯入れて!」とアッコが言うと、

こどもたちは「はーい」と素直に返事をして

迷いなく畑からズボッと野菜を引っこ抜いて

鍋につぎつぎ放り込んでいく…という企画だった。

 

お…おもしろい!!!

 

井村さんはその当時、

「ミソンパ」も「Jリーグカレー」もつくっていて

(見たことない人いたらYouTubeで見てください)、

ぼくはこの人はやばい!絶対すごい人だ!と決めた。

ヒヨコがはじめて見たなにかを親と思う、という、

よくあるたとえのように。

 

「家族in畑」はプレゼンに持っていく案のひとつになった。

クライアントが選んだのは違う案だったけど、

「家族in畑」をはじめて見たときの気持ちは

ぼくの中にまだずっと残っている。

 

 

ぼくらの仕事は基本つらい。

クライアントがこう言ってるし…を言い訳にしながら、

おもしろくはないものを納品してしまうことは簡単にできる。

いや、違う。

仕事をおもしろくすることはとても難しいことだ。

残念ながら、誰にでもできることじゃない。

熱意とか思考とか幸運なんかが味方してくれる必要もある。

だからこそ、ぼくらはときどき拍手するんだろう。

広告表現としておもしろい数少ない広告たちに。

嫉妬とかやっかみを自覚しながらも、

遠くまで跳べた同業者へのまっすぐな敬意をこめて。

 

 

今年、「さけるグミ」でTCCグランプリ 、

ACCグランプリ、カンヌシルバーを獲った井村さん。

圧巻の仕事集『Advertising is』で

ADCグランプリを獲った大貫さん。

ぼくが心から尊敬するおふたりが、

ぼくの師匠である谷山さんと語り合う

特別なトークイベントは11月22日(木)です。

ぜひ!!!

 

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これでほんとにオシマイです。

では、春日井さん、来週よろしくお願いします!

ネット文筆界のバンクシー(?)にバトンを渡すような、

ちょっとそんな気持ちです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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