リレーコラムについて

風景のオリエン

中村直史

数日間北風が嵐のように吹いていたんですが、
昨日から南風に変わりました。
風が変わった途端に暖かくなって、
山桜が燃えるようにポツポツと咲いています。

きっと変化は徐々に起きていたと思うんですが、
突然今すべてが始まったように
山も草むらも花と新緑で視界の全体がパッと色づいています。

2月ごろに鳴き始めたときはホ〜ホヶくらいの
心もとない歌しか歌えなかったウグイスも
今では自信にみちたホーホケキョで
ヒバリたちもビロビロやりはじめているし
雌を求める雄キジのケンケーン!の叫びも響き渡っています。
春が合唱しています。

これが僕が住んでいる五島列島の福江島という場所のまさに今日の風景です。
生まれ育った島に戻ってコピーライター業をしているのですが、
以前から、都会のクライアントとの仕事の際に、
僕が先方に出向いてオリエンを受けるのではなく
クライアントが島に来てオリエンしてくれないかなと思ってました。

なかなか無理な要望かなと思ってたんですが、
ためしに言い続けていたらけっこう来てくれるようになりました。

都会の会議室をはなれて、
車でいっしょに島をめぐって、ときには歩きながらのんびり話す。
たいてい通常のオリエン内容とは別の話をすることになります。
オリエンシートに書かれたこと以前の、
そもそも自分はなにが好きで、なにを素敵と思う人間なのか。
どういうふうに生きてきて、
なんでその会社に入っていまこんなことしてるのか。
どんなことに生きててよかったと思う人間なのか。

そういう話は商品をどう売るか企業をどうアピールするか、
といったこととは関係なさそうですが僕にとってはそこが大事です。
仕事を、やんなきゃいけない経済活動としてじゃなくて
自分たちがやりたくてやってる人間活動にしたいし
クライアントとお仕事受注者という関係じゃなくて
縁あって出会っておなじ何かを目指す友だちとしてやれたら
それだけでもう生きててよかったなと思えるので。

風景にはそんなスタートラインに立たせてくれる力があります。
会議室の中では会社の人と仕事を受けた人ですけど、
風景の中では人間と人間です。

べつにどこか遠い島じゃなくてもたぶんよくて。
公園で木のまわり歩きながらやりませんかとか、
海行ってやりませんかとか。
風景の中でのオリエンおすすめします。

五島列島なかむらただし社の中村直史です。
鶴さんからバトンひきつぎました(鶴さん、ありがとうございます!)
しばし、よろしくおねがいします。

中村直史の過去のコラム一覧

5685 2024.04.06 追伸
5684 2024.04.05 昨日の補足
5683 2024.04.03 震えながら胸を張る
5682 2024.04.03 風景は大教育
5681 2024.04.02 風景のオリエン
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