リレーコラムについて

第5話:炭治郎の言葉

山際良子

頑張れ
炭治郎
頑張れ!!
俺は今までよくやってきた!!
俺はできる奴だ!!
そして今日も!!
これからも!!
折れていても!!
俺が挫けることは絶対に無い!!

吾峠呼世晴先生作『鬼滅の刃』より

大正時代。父を亡くした一家。
長男の竈門炭治郎が母と幼いきょうだい達を支えていた。
ある日、炭治郎が仕事から帰ると家族は鬼の襲撃に遭っており、
一人かろうじて生き延びた妹の禰󠄀豆子も鬼と化していた。
禰󠄀豆子を人間に戻すため、そして、
これ以上、鬼によって悲しむ人を増やさないため、
炭治郎の鬼退治が始まる。
怪我を負い、痛みに耐えながら鬼に立ち向かう炭治郎が、
怖気づきそうな己を鼓舞した言葉。

注)環境によって「ねずこ」の漢字が正式表記されない場合があります。ご了承ください。

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めっちゃ「頑張れ」って言う…
めっちゃ「頑張れ」って言う!

鬼滅の刃を少年ジャンプの連載で読んでいて、
私にとっていちばんの衝撃は
そこでした。

さらに炭治郎は自分だけでなく周りの人にも、
めっちゃ「頑張れ」って言うのです。

 

頑張れ禰󠄀豆子
こらえろ頑張ってくれ
鬼なんかになるな
しっかりするんだ
頑張れ
頑張れ!!

頑張れ!!
人は心が原動力だから
心はどこまでも強くなれる!!

 

「少年ジャンプは“友情・努力・勝利”なんだから、
頑張れって言うのは当たり前でしょ」
「他の作品だってたくさん頑張れって言ってるよ?」
というご意見もあるかと。
すみません、あくまで個人の印象値です。
(異論は認めます)

広告には、法律や各媒体規則で定められた
使えない言葉や表現があります。
そういうのとは別に、
私がコピーライターとして仕事する上で、
取り扱い要注意ワードとして頭の引き出しに
入れているものがいくつかあり、
「頑張れ」は、
引き出しのわりと目立つ位置にいる言葉だったりします。
風邪をひいたら我慢しないで家でゆっくり休んでいましょう。
と、至極まっとうなメッセージを打ち出した風邪薬の広告が、
2ヶ月ほど前に話題になっていましたよね。
世のほとんどの人たちはもう長い間、充分、頑張っている。
根本は社会の構造の問題なのでしょうが、
責任の一端は広告にもあるんじゃないか。
既に頑張っているところに、
コピーで追い討ちをかけるのはいかがなものか。
誰に見てもらうかターゲティングするとして、
年齢や性別、趣味嗜好は想定できても、
その人の心がそのとき弱っている状態にあるかどうかわからないし。
(ごちゃごちゃうるせぇな)
まぁ、そんなことがここ数年、引っ掛かっていて、
「頑張れ」は、
ほぼ使わない言葉になっていました。

※週刊連載で毎週、ストーリーを練り、キャラクターを掘り下げ、
読者の声を聞いて一緒に走りながら成長していく
少年ジャンプの作品と、
基本的には誰も見たいと思っていない
嫌われ者の広告とを並べて語ること自体、
そもそも変なんですけども。

 

頑張れ、それ以外にないんだよ。
あまりに真っ直ぐに届けられる鬼滅の言葉を、
子どもや若い人達が抵抗なく受け入れ、共感している。
子どもが「全集中!」や「水の呼吸」などの
キャッチーさに飛びついているだけかというと…
実は、時代の空気を無意識にも感じ取り、
反応している部分があるような気もします。
そのことはこの先の未来において、
希望なのか、はたまた。

こんなに「頑張れ」に神経質になっていたくせに、
今年の2月に公開した仕事で
コピーに「頑張れ」を使いました。
ずっともやもやしていたところ、
編集室でクライアントのご担当者(若い女性)がポソッと
「いいコピー」と言ってくださったのが聴こえてきて、
ものすごく安堵しました。
さすがにビビりすぎですかね。

いまや、日本の経済と精神の柱となった炭治郎。
(長男だからってあんま無理すんな)
最終23巻がいよいよ12月4日に発売されます。
紙のコミックスでも電子版でも、頑張って正規の手段で読みましょう!
せっかくの空前絶後のブームには、
もじもじしてないで乗っかった方がきっと楽しいです!!

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もうちっとだけ続くんじゃ

 

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