博報堂
博報堂というのは私の古巣であり、
要するに、私は博報堂のOBである。
(同語反復)
2002年に入社したので、
もう四半世紀近く前の出来事である。
当時の博報堂は田町のグランパークにあった。
20Fでハニクラを飲んだり、
流水書房で広告批評を立ち読みしたり
などして楽しんだものである。
入社当時は、営業だった。
出稿日の朝には、掲載ページの栞を挟んで、
電車に揺られて掲載誌を持っていったり、
そのまま喫茶店でさぼったりし、
打ち合わせが長引いたテイで直帰したりして、
スチャラカでお気楽なサラリーマンライフを満喫していた。
まんなかに空気を吸い込む機械みたいなやつが
ついた机が執務室のわきにあって
とにかくみんなそこでタバコを吸っていた。
(あの頃、喫煙室とかってあったのかな?)
もう時効だと思うが、なんか18時をすぎたら、
自席でタバコを吸っていいみたいな
謎ルールもあったような気がする。
(時効じゃなかったらごめんね)
ふと思い出したのだが、
当時は、3Fだかなんかに、
VHSのビデオをダビングするためだけの部屋が
あったりして、今思うと隔世の感である。
田町は、赤坂ほど飲食店も多くなかったので、
残業終わりはよく麻布十番か西麻布に繰り出したものだ。
よく行ったのは「こま」とか「たぬ吉」とか。
昔話をするのは、
なんだか遠い国の話をするようで、
適度な無責任さもあり実に良いものだ。
ノスタルジーは、ロマンの一形態なのかもしれない(適当)。
ひとつここいらで話しておきたい昔話があるので聞いてほしい。
スチャラカ営業だった私が得意先からの帰り道、
田町駅でぼうっとしていたときに一人の女性に声をかけられた。
とてもおしゃれで小柄でキュートな感じの女性。
「博報堂って、どう行ったらいいか教えてくれません?」
当然こう答える。
「あ、僕、社員なんで、一緒に行きましょうか」
たわいもない話をしながらふたりでしばらく歩いた時に、
彼女はこう言った。
「勘が当たったなー。ぜったい博報堂の人だと思った(笑)」
「なんでそう思ったの?」当然聞く。
「顔に書いてある(笑)もう雰囲気がめちゃくちゃ博報堂。
やさしそうだしなんかモテそうな感じしたから!」
あれ?なんかこれ、ナンパかな?
若き日の紅顔の美少年(嘘)の私はそんなふうに思ったものである。
グランパークの前には、グランちゃんという銅像というか、
美術作品のようなものがあるのだが、
「わ!かわいい!フェルナンド・ボテロのやつだよね?」
とはしゃぐ彼女。
「ありがとう、連れてきてくれて──」
満面の笑みでそう言う彼女。
「どういたしまして。
ところで──、野田凪さんですよね?」
と私は言ったのである。
当時、飛ぶ鳥を落とす勢いのアートディレクターだった野田凪を
広告会社社員が知らないわけないのである。
「なんだ、知ってたら言ってよ!いじわるだなあ」
などと言う野田凪に、
「ごめんなさい。ちょっと泳がしてました(笑)」
なんて言いながら、二人でグランちゃんを
撫でながら笑い合ったのであった。
遠い昔の春の日を思い出しながら、
すべてはいつかやさしさの中へ消えていくのだなあ、
などと、ひとりごちる。
さて、私のリレーコラムは、今日でおしまいです。
====================
来週のバトンは、博報堂の先輩で、
勝手に私が兄貴分として
慕っている土井隆史さんです。
土井さん、お願いしますっ!
| 6211 | 2026.11.06 | 博報堂 |
| 6210 | 2026.11.05 | コピーライターという仕事 |
| 6208 | 2026.11.04 | コラムってなんなのさ |
| 6207 | 2026.11.02 | シンギュラリティの思い出 |
| 4380 | 2018.01.12 | そろそろ広告代理店やめちゃおうか問題 |