リレーコラムについて

児島令子さんは癖になる③

野原靖忠

児島令子さんはテンサイだと思う。
天災ではなく天才の方。

なんていうと、彼女は「冗談やめてよ」というに
決まっているが、僕の中の心の声がそういうのだ
から仕方がない。
出会ったころは「コピーの上手な、さばけた姉ち
ゃん」ぐらいに思っていたのだが、彼女のテンサ
イを自覚した瞬間があった。

1995年のある日、電通の大阪支社に勤務して
いた僕はいつものように通勤で阪神電車に乗って
いた。ふと車内を見回すと、一枚の中吊りが目に
飛び込んできた。ローカルでマイナーな結婚披露
宴式場の広告。辛気臭い女性の辛気臭い写真の
脇にそのコピーがあった。

キスというものを、ここしばらく、してない。

僕は、そのコピーから目が離せなくなった。席を
立ち、通勤客をかき分け、そのポスターのボディ
コピーを熟読した。
「大阪に、コピーの天才が現れた」。その瞬間、
そう思ったことをハッキリと記憶している。

そこに描かれていたのは、それまでのウエディン
グの広告で描かれてきたようなペラペラでインス
タントな幸福感ではなかった。恋にあこがれなが
ら恋を怖れる女性のリアルでむきだしの本音。
それはすべての女性の複雑で普遍的な心情に
到達しているような気がした。

僕はこのコピーを書いた人に無性に会いたくなっ
た。会社についた途端、その結婚式場に電話をし
て、コピーライターの名前を確認しようとした。
でも、残念ながらその式場の総務のお姉さんの話
は要領をえず、結局分からずじまいだった。無念。

それから一カ月後だ。児島さんから会社に電話が
かかってきた。突然「野原さん、あんた結婚すん
の?聞いてないよー。水くさいなー」とたたみか
けられた。「へ???」「だって私が仕事してる
結婚式場の人と話してたらさー、電通の野原さん
ていう人から電話がかかってきて、根ほり葉ほり
いろんなこと聞かれたっていってたよー」。

「あんたやったんか!」。
なんだ。天才はこんなに近くにいたんだ。

(つづく)

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