リレーコラムについて

代理店の外におけるクリエイターという生き方 その2

橋本剛典

代理店の外でクリエイターとして働くメリット・デメリットを自分なりに書いてみるコラム。第2回です。

さて、代理店を抜けて他業種のクリエイターとして生きるメリット・デメリットを書く前に、簡単に僕のキャリアを紹介させて下さい。「さっさと言えや!」と思われるかもしれませんが、バックグラウンドって、実は意外なほど重要なことが後々分かるはずです。

20年近く前に大学を卒業した僕は、読売広告社でメディアプランナーに就きました。いえ、正確にいうとコピーライターになりたいと言って入社した結果、メディアプランナーに就かされたんですね。当時の僕は「何が何でもコピーライターになりたいんです!」とことあるごとに部署の上司や先輩、クリエイティブの方々にまでアピールする困った奴だったと思います。なんならメディアプランニングの資料に、こっそりコピーも書いたりしていました。先輩方は救いようのないメディアプランナー見習いだった僕を見放すことなく、メディアプランニングの基礎やツールの使い方や分析の手法を一からたたき込んでくれました。

しかし、そのご恩を返すどころか、僕はメディアプランナー修行の傍ら、同時に宣伝会議コピーライター養成学校へ通い出しました。自分なりにコピーを書いて金の鉛筆(養成学校では良いコピーを書いた人にもらえたのです)をたくさんいただき、講師だった小田桐昭さんの事務所にすぐに移籍。そこに所属しながらTCC新人賞を取った後、広告代理店へ転職しました。こう書くと、いかに自分がワガママし放題だったかというのがよく分かりますね。いまさら反省しても遅いので、僕も若手の方々のワガママになるべく付き合うことで罪滅ぼししたいなと思います。

 

さてようやく本題です。広告代理店の中で転職はしていたものの、そこからプラットフォームへ飛び出した僕が体験したことを列挙していきたいと思います。

  1. 新たに勉強することが盛りだくさん

まずぶちあたったのがこれです。他業種では別かもしれませんが、プラットフォームでは本当に毎日のように新しいメニューに関する情報やナラティブ(いまだにこの呼び方に慣れませんが、知識や情報などをまとめたもの)が作られていきます。日本はもちろん、海外からも多数です。

常に知識を吸収し、自分をアップデートすることが好きな人にはとても刺激的であり、メリットであると言えます。一方、面倒くさがりの人や、そもそも自分を変えることに消極的な人にはデメリットとなります。

とはいえ、社内で公開されたすべての情報を隅から隅まで知り尽くさないと仕事にならない、というわけではありません。重要なのは膨大な情報の中から、自分にとって一番必要なものや、追加で知っておくべきことを、その場その場で取捨選択して取り入れて柔軟に対応していくことです。そして、そういう過程を楽しめる人はとても向いていると思います。

僕の場合は、元メディアプランナーだった経験がまさかのここで活きており、それほど苦手意識を持たずに、なんとか楽しみながら吸収することができています。

もちろん広告代理店でも、勉強することはたくさんありました。しかし、それらはどちらかというと能動的に自分から他の優れた広告作品を見て分析したり、広告以外の様々なクリエイティブに触れてインスピレーションを受けることが中心でした。現在のように世界中から滝のように様々な知識やアップデートされた情報を浴びせられ、またこちらからも世界へ発信する環境とは大きく異なるように思います。

その3へ続く

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