リレーコラムについて

バナナジュース

吉田洋晃

先日、東京メトロ表参道駅の改札前のDEAN & DELUCAで
待ち合わせのために時間を潰していたら、
素敵な会話に遭遇したので共有させて頂きます。

お昼のピークも少し過ぎて、
店員さんもホッと一息ついたくらいの落ち着いた雰囲気の店内。
表参道という立地柄、上品でおしゃれなお客さんが多い印象ですが、
一際目を引く気品溢れるお年を召した女性が一人で来店しました。

焼き上がったクロワッサンを満足そうに眺めながら、
パンコーナーをスルーして奥のレジに向かう上品なお婆さま。
レジの頭上にあるメニューをスッと指差したかと思うと、
店員の女性に尋ねました。

「あちらにあるバナナジュースって、どんな味かしら?」
「あれは…バナナの味ですね。」
「じゃあ、それにしようかしら。」

え?
何、今の会話…。

はじめに、どんな回答を想定して尋ねたのか全く理解できない最初の質問。
次に、接客業としてもう少し気の利いた返答は出来なかっただろうか、と思わせる店員の素っ気ない返し。
そして何より、質問前と質問後で何一つとして意思決定への参考材料が
提示されていないにも関わらず、何の澱みもなく「それにしようかしら」と
答えるお婆さまの決断力。

素敵すぎる。
お金を払いたい。代わりに。
バナナジュース代583円(税込)を。

企画はだいたい会社か家でしか出来ないタイプなのですが、
こんな素敵な会話に出会えるのであれば
喫茶店とかで企画するタイプのプランナーになりたい。
そんな風に思った昼下がりの出来事でした。

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