リレーコラムについて

コピーライターになる28年前

安達 岳

「サボテンはうたう。なぜかうたう。せつせつとうたいつづけた」

 

 

1989年。ぼくがコピーライターになる28年前。

そして、ぼくが生まれる2年前に「MOTHER」というゲームが生まれた。

やがてぼくも生まれ、このゲームに出会うことになる。

結果いま、MOTHERグッズを買う生活に追われ、破産しそうである。(シンプルやばい)

 

それほど、ぼくはMOTHERがすきだ。

そんな話を、したいと思う。

 

 

兄の影響で、1996年ごろMOTHER2に出会った。

そう、さいしょに触れたのは、2の方だった。

プレイする兄の背中から画面を覗きながら、そのときやっていた別のゲーム、

ドラクエやロマサガ、聖剣伝説3といったものとぜんぜん雰囲気がちがい

「変なゲーム」と感じていた。

 

中学生のとき、なんとなく思い出してプレイしてみた。

相変わらず変で、不思議なゲームだった。

そして、いちばん印象に残ったのが、冒頭のことば。

 

砂漠で顔のついたさぼてんを見つけて話しかける(厳密にいえばテレパシーを行う)と

さぼてんはうたいはじめる。せつせつと。

 

「せつせつと」は漢字でかくと「切々と」で、

「心に強く迫るさま。また、心のこもっているさま」「音や声が寂しく身に迫るさま」

という意味らしい。

 

うたっている歌は、

MOTHERのメインテーマといえる「エイトメロディーズ」の一部なのだけれど、

なぜこのサボテンがせつせつと歌っているのかはわからない。

そもそもサボテンはうたわない。

それなのに、そんなサボテンがせつせつしている。

 

2006年の420日(ぼくの誕生日と同じ日)には、MOTHER3が発売される。

このゲームの終盤で、こんなセリフが登場する。

 

みんなには かんじのわるい

ひとだったかも しれないけど

ぼくには とても

やさしいひと だったんだ。

もう かえってこないのかなぁ。

さびしいよ。

 

ある男に飼われていたねずみが飼い主に対していうことば。

 

MOTHERではさいしょに「好きな食べ物」を入力するようもとめられる。

ゲーム中、旅につかれ家に帰るとお母さんはなにも聞かずに、

その入力した好きな食べ物を作ってくれる。

もちろん、それで体力が全回復するのだ。

 

 

ぼくがこのゲームに惹かれたのは、そういった部分なんだと思う。

 

 

どこか悲しみを帯びている。

でもそれを悲観するのではなくて、人生の一部として受けとって生きている。

さぼてんにだって。ねずみにだって。その主人にだって。むすこにだって。

それぞれの人生があって、そこに感情があって、きっと「理解しきる」ことはできない。

 

あなたはあなた。わたしはわたし。

 

せつないけれど、やっぱり事実なのだ。

 

でも、

 

それでも、

 

その事実をがんばって理解しようとする。

 

受け入れようとする。

 

受け入れたいと思う。

 

ことが、たいせつなんじゃないだろうか。

 

 

それはなんだか「母の愛」みたいだなと、MOTHERをプレイしてぼくは思った。

そんな人間になりたいとも。

 

だからぼくは、

いまもそういうどこか「悲しさ」や「報われなさ」「憂い」といった感情を含んだものがすきだ。

エモよりノス(タルジー)がすきだ。

そういったコピーをかきたいなって、思っている。

 

 

MOTHERに出会った20年後。

 

 

ひょんなことから、はじめて参加した代理店のインターン。

コピーを書かされる課題があり、3番以内に入ったごほうびに、ある一冊の本をもらった。

 

日本のコピーベスト500

 

ページをめくると、いちばん最初に出てきたコピーはこんなコピーだった。

 

 

おいしい生活。

 

 

あのMOTHERをつくった人とおなじ職業を、ぼくも目指すことをきめた。

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