ギャンブラーになった日~WAKUWAKU SIDE~
「来週、マカオでブレストでもするか。」
てるてるが電通九州に来てから3か月が経過したころ、僕はすっかり諦めていた。
たった3か月で、てるてるは電通九州内で「コミュ力おばけ」「似非菅田将暉」「ラッキースケベ製造機」など様々な異名を獲得し、あっという間にみんなに愛されるポジションを築いていた。さらに、九州に来るなり発表されたTCC。東京でやったいくつかの素晴らしい仕事で、最高新人賞を獲得。
東京からの出向者の大半がそうであったように、九州に来て頑張って頑張って、そして賞を獲って凱旋していく。それを、ねちねちと妬みながら愚痴を言いながら酒を飲む。それが、僕の唯一の楽しみだったのに、その機会すら与えられなかった。まったくもって可愛げがない。
要するに天性の人たらし。だが、すでにその人間力に一番たらされていたのは、言うまでもなく僕自身だった。圧倒的なその才能とスター性を目の当たりにして、できることは「干支が一緒だから同期!」と言い張り迎合することと、酒を飲ませることだけだった。
その時期、僕がCDでてるてるがプランナーという競合プレゼンが入っていた。スゴロクのハイボールを飲みながら、長崎でのキャバクラの楽しかった思い出を嬉々として語るてるてるに、なんとしてでもCDとしての威厳を示さねばならない。最高の新人に偉そうに教えることなど何もないというのに。
てるてるがまた、マカオのカジノの話をはじめた。ここしかない。より狂ったことを言わなければ、この年の離れた同期に舐められっぱなしになる。
「来週、マカオでブレストでもするか。」
まるでそんなことなんでもないかのように。このあと二次会どうする?くらいの感覚でさらっと言いながら、実は自分自身がほぼカジノ童貞であることを隠しながら。しかし、仕事ができる男は決断も早い。「いいねー!」というなり、ものの一時間でお互いの休日の予定を合わせ、エアを取りマカオのグランドハイアットを予約した。そうして翌日には、ブラックジャックのベーシックストラテジーの表をプリントアウトしてきて「来週までにこれ覚えといて。これ通りに賭けると勝てるから」と言って、ハイボールを飲み始めた。もちろんその酒は僕の奢りである。
まったくもって、可愛げがない。
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というわけで、後輩なんだけどいつの間にか同期になっていた。てるてること辻中輝からバトンを受け取りました、電通九州の和久田と申します。前回リレーコラム書いたのいつだったかな、と思ってみてみたらちょうど前回のW杯のときでした。あれから4年半で、こんなに世界が変わるなんて。当たり前にマカオに行けてたのも懐かしいね、という話を明日くらいまでは書いてみようかと思います。では、一週間よろしくお願いします。
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