リレーコラムについて

③続 ロメオと心臓

後藤誠一

前回の続きです。

 

この日撮影するヴィンテージ高級車。

その、右のヘッドライトからドアにかけてが、なぜかボッコリ凹んでいます。

 

制作進行の僕は、

当て逃げ?

夜のうちに?

制作の管理責任?

もうクビ?

寝起きの脳がフル回転。

 

その時、背後から声がしました。

 

「わりぃわりぃ・・」

ディレクターでした。

 

D「うれしくてさあ、夜中乗りまわしてたら・・ドカン!(笑)」

犯人はそれほど凹んでいません。

僕「・・撮影は、延期しますか?」

D「やるよ・・こっち来てみ」

ディレクターは車の左前方に僕を立たせました。

D「そこから見て、何か問題はあるか?」

凹んだ部分は車の右側サイド。

確かに左側から見れば借りた時のままです。

僕「・・見た目には・・ないです」

 

1カ月後、TVには阿蘇の雄大な景色をバックに走るアルファロメオの勇姿がありました。

どのカットを見ても左側だけの・・。

 

大林宣彦監督の傑作「さびしんぼう」には、富田靖子が尾美としのりに、見られたくない時の自分を見られてしまう、という場面があります。

その時、彼女は左側の顔を指しながら、静かにこう言うのです。

 

「どうか、こちら側の顔だけ見ていてください。」

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