リレーコラムについて

書くこと 選ぶこと

一倉宏

岩田純平からリレーが回ってきて。
これで3年連続の指名登板になります。(人気者?)

ことし一倉クラスの教え子たち(弟子部と呼んでいる)と
地元杉並にて吟行(WALKING のち句会)しました。
句会の参加者には俳号を授けます。
岩田の俳号は「鉄片」、その由来は…… 忘れました。
「いつかテッペンをとれ」という意味だと
いまになって後付けしています。

岩田純平は多産型のコピーライターです。
あるレベルを保ったコピーを次々と量産できる。
かつての「ルーツ飲んでゴー!」の仕事が典型でしたし。
このたびのTCC賞受賞作も多産なるシリーズものでした。

日頃から、とにかくたくさんコピー案を書いている。
これは、ずっと変わらない岩田純平スタイルのようです。
それだけのパワーがあり、「書くちから」が持続することは、
コピーライターとして、ひとつの有意な才能に違いない。

私はどうかといえば。
昔から、あまり数を書くタイプではありませんでした。
もちろん、訓練時代にはたくさん書いていたけれど。
だんだん、脳内であれこれシミュレーションして。
ある程度まで「見えた」ところで書くようになりました。
このごろは「できた」に至るまで脳内作業で詰めている、かな。

その違いは、個人的なスタイルと経験値によるもの。
つまり「書いてから選ぶか」あるいは「選んでから書くか」。
そこに、どちらがいいか、の答えはないでしょう。

しかし。
最終的な答えを出すのは「選ぶ」です。

* * * * *

一度だけ、例外的な「コピープレゼン」をしたことがある。
糸井重里さんに『MOTHER』新発売のコピーを頼まれたとき。
(こんな名誉なことってあるかい? コピーライターとして!)
たくさん書いた原稿用紙の束を持っていってぜんぶ見てもらった。
糸井さんの事務所で、その場で選んでもらったのが、
「エンディングまで、泣くんじゃない。」と「名作保証」だった。

1つは、ゲームの世界観を伝えるために。
1つは、立場上から「売り」のために。

「選ぶ」根拠をそのように言われたのを憶えている。

* * * * *

「エンディングまで」は、その後いろいろと言及されたり、
引用されたりしてきました。いまに至るまで。
星野源と羽生結弦がNHKの番組で『MOTHER』を指して、
「これ、泣けるんだよね」
「泣くんじゃない、って言われてもね」と会話したことも。

「あれを書いたのは僕じゃないって、いまでも言ってるの」
糸井さんは、そうおっしゃいますが。
いえいえ。
あのコピーを、たくさんの中から選んでくれて。
いまに残してくれたのは、ほかならぬ糸井さんでしたよ。

 

NO
年月日
名前
6020 2025.12.15 一倉宏 書くこと 選ぶこと
6019 2025.12.14 岩田純平 2011年
6018 2025.12.14 岩田純平 1989年
6017 2025.12.14 岩田純平 1996年
6016 2025.12.12 岩田純平 2001年
  • 年  月から   年  月まで