にっこりあいさつ
2025年の1月にふと、一年のスローガンを決めてみたくなった。
こういうのはシンプルなほうがいいだろう、ということで、あまり深く考えず「にっこりあいさつ」に決めた。
いちおう決めた理由を説明すると、僕の顔は、真顔だとけっこう怖いというか、厳しめなタイプで、自分ではそんなつもりがなくても、周りに気をつかわせてしまうからだ。父親の顔も若い頃は険しかったので、たぶん遺伝だろう、と親のせいにしておく。30歳超えてそれは無理か。
せっかく決めた標語を忘れるといけないので、会社のデスクにも「にっこりあいさつ」と書いた紙を貼って、目が合った人とはなるべくあいさつをすることにした。なんか小学校みたいだなと一瞬思ったけど、こういうのは勢いが大事なんだと言い聞かせて、とにかくやってみた。
意外と、みんなあいさつ返してくれた。よかった。
やってみて気付いたが、
たいていの男は、30歳を過ぎると、怖い。
と思っておくくらいがちょうどいい気がする。
あ、個人の感想です。コンプライアンス的に。
自分が入社した10年前を振り返ると、会社のおじさんたちはみんな怖いなとなんとなく思っていた。そしてそのおじさんたちって、たぶん当時30代半ばくらいだった。つまり、今の僕だ。
コピーライターとしてはまだ修行中って感覚がずっとあるので、まだ若手な気持ちが残っているのだが、後輩から見たらキャリア10年以上ある先輩って相当上に見えるので、自分で思っている以上に威圧感というか、怖さが出ちゃう。
なので、大事です。「にっこりあいさつ」。
当初は「笑顔が嘘っぽくて怖いです」という心ない批判も受けてだいぶ悲しみに震えたが、結果的に、1年間やってみてよかった。
まず、「ご機嫌な人に見える」というのが、いいポイント。
そう見えるといいなとは思っていたが、想像以上に印象がよくなるっぽい。
「なんかご機嫌だね」「いいことあったんですか」と言われることが増えた。
「なんでフロアでニヤニヤしてるんですか」と後輩に言われた時は、ニヤニヤしてるわけではないよと思って落ち込みました。あいさつのつもりでした。
虎ノ門広告祭の立食パーティーで久しぶりにお会いしたMさんという有名コピーライターは、僕が笑顔であいさつしたので同一人物とは思えなかったそう。
・・・今まで、そんなに不機嫌に見えてましたか。ほんとすみません。やだなあ。
というわけで、気軽にはじめた「にっこりあいさつ」キャンペーンは、想像以上にダメな自分を浮き彫りにして、ダメな自分と向き合う結果になった。でも今やっといてよかった。ギリギリ、危なかった。まだ間に合うかな。
というか、
キャンペーンってすごいですね。あと、スローガンってすごいですね。コピーライターのみなさん、言葉ってすごいんですよ。知ってましたか?
と言いつつ、
こないだデスクで仕事していたら、後輩がニコニコしてこっちを見てくるので、めんどくせえなあと思って、
「え、なに?」
って言ったら、
「にっこりあいさつ、でしょ!」
って逆に言われてびっくりした。
こんなに意識してもできないのだから、口に出してない目標はどれだけ達成できないのだろうか。大人が変わるのは、ほんとに難しい。夢とかやりたいことはもっと言葉にして、ばんばん口に出したほうがいいなと思った。
もう12月なので、ぼちぼち来年のスローガンが気になってくる。
恥ずかしながら、11月からいろいろ考えて、
「人生は思い出づくり。仕事は友だちづくり。」
はどうかな。なんか去年よりかっこいいし。と思って、周りの人に意見を聞いたら、
「絶対やめたほうがいい」
という意見がほとんどで、やっぱ周りの人に意見聞くの大事だなと思った。コピーライターとしてこんな感じで大丈夫なんだろうか。
じゃあ逆になにがいいかなと聞いたら、
「にっこりあいさつ」のままでいいんじゃないですか。
と言われたので、たぶん2026年は「にっこりあいさつ2026」にします。
2026、を追加したのが、コピーライターの意地。
たぶん、みんな人のスローガンに興味とかないんだろうな。
でも、スローガン、おすすめです。