生成AIに月5万円課金したらどうなるか。
茗荷くんからバトンを受け取りました。
電通の小堀と申します。
茗荷くんは、めちゃくちゃいい人です。
12、13年前のことです。
近所のホームセンターで、
耕運機の爪を見つけました。

耕運機の爪(イメージ)
土に打ち込まれる衝撃に耐える強さと、
摩耗を防ぐ硬さを両立させているらしく、
ずっしりとした重さがあります。
その鋼鉄を覆い隠すように赤い塗料が
べったりと塗られています。
バナナみたいな形の、鋼鉄のかたまり。
「うんうん、これはいいものだな」としばらく眺めていると、
茗荷くんが出張で東京に行くと言っていたのを思い出しました。
これはチャンス。
レジでお金を払い、
会社に置いてあった茗荷くんのバックパックに、
そっと忍ばせました。
「なんか出張の荷物が重いと思ってたら、よくわからん鋼鉄が入ってたんやけど〜!」
みたいな連絡が来るかなとドキドキしていたのですが、
茗荷くんの移動手段は新幹線ではなく飛行機でした。
空港の保安検査でひっかかり、職員の方に、
「これはなんですか?」
と聞かれ、
茗荷くんは突然現れたバナナみたいな鋼鉄のかたまりを見つめながら、
「僕もわからないです」
と答えることになったそうです。
そんなことがあったにもかかわらず、
茗荷くんはいまだに仲良くしてくれているので、
本当にいい人だと思います。

茗荷恭平さん(イメージ)
さて、茗荷くんがいかにいい人であるかを説明していたら、
それだけで終わってしまいそうですので、
生成AIの話をさせていただいてもよろしいでしょうか?
テーマは、
生成AIに月5万円課金したらどうなるか。
でございます。
現在の私の契約プランはこんな感じです。
* Cursor / Ultra:約3万円
* Runway / Max:約1.5万円
* Gemini / Google AI Pro:2,900円
* Tripo / Pro:約3,000円
* Suno / Pro:約1,000円台
合計:約5万円(MAX時)
あらためて合算してみて、
すみません、ちょっと、
吐きそうになっているのですが、
お腹に力を込めて続けますね。
さて、なんでそんなことになったのか。
きっかけは、闇でした。
半年くらい前に、
日本のホラーコンテンツを牽引する
株式会社「闇」の頓花聖太郎さんが、
個人としても会社としても
生成AIを取り入れていることを知ったのです。
コードエディタ型の生成AIを、
文系の人がぶんぶん回している事例がほぼない時期でした。
「会社でお話してもらえないでしょうか」
とお声がけしたところ、なんと快諾いただけました。
これがもう、本当に、素敵なお話だったのです。
【第1回】AI-Readyへのロードマップ─ ホラー企業が直面した「生き残り」の選択
https://note.com/death_co_jp/n/n7d53ac81d6e3
【第2回】「私、エンジニアじゃないし」←そんな人こそ『Cursor』を使うべき理由
https://note.com/death_co_jp/n/na4695f11c86b
(おもしろいので、ぜひ!)
読んでくださっている方のほとんどは
ChatGPTやGeminiのようなチャット型AIは使ったことがあると思います。
でも、コードエディタ型のAIは、
まださわったことがない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
(2026年6月時点)
コードエディタ型AIは、
チャット型の生成AIと比べると何がすごいのでしょう。
ざっくりいえばこちらの2点があります。
①PCのファイルをいじる機能がある
②mdファイルと組み合わせると最高
この2点さえ理解してしまえば、
もう勝ったようなものです。
まず
①PCのファイルをいじる機能がある
こちらについて具体的に説明させてもらいますね。
たとえば、
シリーズ5本の字コンテを作っていたとしましょう。
最初は3人固定の会話劇を想定していたのですが、途中で、
「登場人物を1人減らして、2人にしたほうがよさそう」
と思ったとします。
普通なら、その人物を消して、
必要なセリフを別の人物に移して……と
辻褄を合わせる必要があります。
めんどくさいですよね。
でもコードエディタ型AIなら、
「5本の字コンテから登場人物Aを消して、2人の会話として成立するように調整して」
とお願いしたらいいわけです。
もちろん一発で完成ではありません。
でも、大まかな修正はしてくれます。
ほかにも、
「舞台設定だけ江戸時代に変えて」
とお願いすれば、文体や小道具や会話のニュアンスまで、
それっぽく調整してくれます。
Wordの一括置換のすごい版みたいな感じですね。
単語を置き換えるのではなく、文脈ごと置き換えてくれます。
ただし、気をつけるところもあります。
指定したフォルダを書き換える権限をAIに渡すので、
「PC内のすべてのファイルのセリフをゴリラっぽくしてください」
とお願いしたら、
全部のセリフがウホウホになる可能性があります。
だから、さわらせるフォルダは、
慎重に選んでくださいウホ。
続いて、
②mdファイルと組み合わせると最高
こちらについて説明させてもらいますね。
mdは「Markdown」という形式のテキストファイル。
見出しや箇条書きで構造をつけやすく、軽い。
生成AIにも人間にも理解しやすいファイル。
どうやって使うのでしょうか。
たとえば、
・オリエン資料
・ターゲットの特徴
・自分のなんとなくの仮説
・企画メモ
・クライアントさんの判断基準
これらをmdファイルにして、
生成AIに読ませてみましょう。
すると、事情をわかったうえで、
相談に乗ってくれる相手になります。
実際、闇の頓花さんは、
会社の役員のmdを作っておられるらしく、
資料を本人に見てもらう前に、
仮想役員にチェックしてもらったりするそうです
(けっこう本人に似たような反応になるとのことでした)
ちょっと怖いお話をしてしまいましたが、
mdファイルは、あなたのパソコンに眠るデータを、
かけがえのない財産に変える可能性を秘めているのです・・・!
だって、あなたのパソコンには、
いろんなお仕事の試行錯誤の跡が
たくさんデータとして残っているはず!
これを軽くて生成AIが理解しやすいmdファイルにして、
組み合わせたら・・・!
コードエディタ型の
ヤバさと楽しさがお分かりいただけたでしょうか。
コードエディタ型としては、
Claude Code、Codex、Antigravity、Cursorなど、
いろんなサービスがあります。
厳密にはそれぞれ得意なことや使い方が違うみたいですが、
「AIがフォルダの中身を見ながら、一緒に作業してくれるツールがいくつかあるんだな」
くらいに思ってください。
さて、少し話題は変わるのですが、
最近、「呪文の言語学: ルーマニアの魔女に耳をすませて」という本を読みました。
呪文というと、
黒い帽子をかぶった魔女が使うものというイメージがありますが、
実際には日本でいう「おまじない」や「おばあちゃんの知恵袋」に近いものだそうです。
病を治すため、悪いものを遠ざけるため。
そうした目的で暮らしの中で唱えられてきた言葉だそうです。
敷居の高い学術書なのかなと思っていたのですが、
著者の角さんの語り口がとっても軽妙で、何度も声を出して笑いました。
同時に、ルーマニアの呪文の深淵ものぞける素敵な本です。
さて、この本のなかに、呪文の構造を分類している章があるのです。
こちらを読んで、
「呪文、キャッチコピーと似ているのでは?」
と感じました。
ただ、それを自分でうまく体系立てて説明する力は、
私にはありません。
でも、大丈夫です。
「呪文と広告は似ているかもしれない」という直感があればいいのです。
本を読んでおもしろかったところや、
具体的な呪文のメモをmdファイルにする。
さらに、名作キャッチコピーをまとめたmdファイルを用意する。
その2つを生成AIに読ませて、共通点を整理してもらう。
すると、こんな感じになりました。
============================
「呪文とコピー」の共通点
1. 類比と反転
ルーマニアの邪視払いには、こんな言い回しがあります。
> 烏が海の水を飲めぬように、邪霊もこの者に触れえぬように
烏が海の水を飲めないように、
邪霊もこの人には触れられない。
ありえないことを持ち出すことで、
悪いことも同じように起こらない、という感覚をつくっているわけです。
論理的に証明しているのではありません。
比喩の形で、「それは起こらない」と強く言い切っている。
コピーにも、似たような反転があります。
> ケンカをやめた。だから、もう負けない。
> パルコ
ふつうは、勝つために戦うと考えます。
でもこのコピーは、戦わないから負けない、と言う。
常識の因果をひっくり返し、
別の見方を差し込んでいるのです。
2. 音と反復
呪文では、意味だけでなく、
唱え方そのものが重要になります。
小声で唱える。
同じ形の言葉を繰り返す。
似た音や構文を並べる。
こうした音や反復によって、言葉はただの情報ではなく、
身体に残るリズムを持ちます。
たとえばこちらの呪文の、
> 行け、行ってしまえ、水の上を / 風の上を
反復や対句は、
意味を説明する前に、耳と身体に入ってきます。
コピーも同じです。
> 不思議、大好き。
> 西武百貨店
> ダダーン ボヨヨン ボヨヨン
> ピップ
これらは、説明として強いというより、
音として残る言葉です。
声に出したくなる。繰り返したくなる。
呪文とコピーは、どちらも「意味」だけでなく、
口に出され、耳に残る言葉として設計されているのです。
3. 名づけと対象化
呪文では、病や邪視や悪いものが、しばしば名指しされます。
名を呼ぶことで、
ぼんやりした不安や痛みを、働きかける対象として取り出す。
これは、名づけによる対象化です。
正体の見えないものを、
言葉の中で「それ」として扱えるようにする。
そこに、呪文の大きな働きがあります。
コピーにも、名づけの力があります。
> おいしい生活。
> 西武百貨店 / 糸井重里
人々がなんとなく求めていた、
気持ちのいい暮らし、楽しい消費、生活を味わう感覚。
そうしたまだ輪郭のなかった欲望に、
「おいしい生活」という名前を与えたコピーだと言えます。
名前がついた瞬間、それはただの気分ではなくなる。
呪文もコピーも、名づけによって、
見えにくかったものを人が扱える形に変えているのです。
============================
こんな感じでまとめてくれました。
自分がなんとなく持った感覚に、
考えるための補助線を引いてもらえる感じ。
楽しい・・・!
楽しすぎてコードエディタ型の生成AIに、
3万円のプランを契約してしまったわけですが、
楽しいだけではないのです。
一見、コピーとは関係のなさそうな
mdファイルをたくさん持っておく。
これが生成AIと協力してコピーを書くために
大切になってくるのではないか、と私は考えています。
生成AIにコピーを書いてもらおうとした際に
一番最初に考えることは、
過去の名作コピーのmdをたくさん集めて、
それをもとに、生成AIにコピーを書いてもらうことでしょう。
確かにそれっぽいのはできるかもしれません。
でも、それは平均に近づいていく作業でもありますし、
誰でも真似できることですよね。
むしろ人間がやるべきなのは、
生成AIが勝手には結びつけないものを
結びつけることではないでしょうか。
それは、
・ルーマニアの呪文の構造.md
・町内会のお知らせ10年分.md
・少年漫画における解説キャラの変遷.md
・防災マニュアル.md
みたいな、
一見コピーとは関係ないmdファイルを組み合わせる
ことだと考えています。
例えば、先ほどのmdファイルでいえば
こんな視点がコピーに活かせるかもしれません。
・ルーマニアの呪文の構造.md
>反復、問いかけ、言い換えによって、聞く人の身体感覚に働きかける言葉の技法。
・町内会のお知らせ10年分.md
>角を立てずにお願いするためのコミュニケーション術
・少年漫画における解説キャラの変遷.md
>難しいことを、熱量を落とさずにわかりやすく伝える技法
・防災マニュアル.md
>不安をあおりすぎず、今すぐ取るべき行動へ人を導く設計
コピーを考えるときに、
料理に入れる隠し味みたいな感じで、
あのmdファイルを読み込ませてみる・・・!
そんな使い方が楽しいのではないかなと思うのです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・とこんな話を毎日、横に座っている茗荷くんに話しかけ続けているのですが、
それでも仲良くしてくれているので、やっぱり茗荷くんはいい人だと思います。
そんなわけで、
明日も生成AIの話を!
させていただき!ますね!
うわ〜!
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