アヒルとモンキー
日本の怪談人気は衰えを知らない。
書店ではたくさんの怪談本が並び、YouTubeでも新しい語り部たちが無数の怪談を語っている。
だが、それでも新しい恐怖はまだ存在する。これはそんな話だ。
幼い頃、私が通っていた幼稚園で飼っていたアヒルが卵をうんだ。
幼稚園の先生の発案で園児たちが交代で卵を家に持ち帰り、あたためて、孵そうということになった。
卵はなかなか孵らず、私の番になった。
自分の家で可愛いひよこが孵るかもしれない。
私は家にアヒルの卵を持って帰り、母にひと通り経緯を話して預かってきた卵を渡した。
母なら卵をあたためるコツを知っているかもしれない。
母はアヒルの卵を持って立ち上がった。
と、長方形のフライパンに油をひいて、カンカンパカッと卵を割りジュワーッと焼いて、卵焼きを作った。
こんなこともあった。
大学の頃、友人がモンキーというバイクを買った。
彼の家に行き、一度乗らせてくれと僕はいった。彼は承諾した。
玄関を出て、バイクを出し、彼はまたがってエンジンをかけた。
私は自分が乗るタイミングを伺った。
彼は二度ほどアクセルをふかす。
と、そのままバイクは走り出し、彼はどこかへ行ってしまった。
相手の思考回路が全く追えない。そんなとき、真の恐怖は訪れるのではないか。
それが普段よく知る人間ならなおさらである。
これに比べればたとえ人面犬(野良犬)があらわれても、全く怖くない。