リレーコラムについて

AI vs. 開高健

一倉宏

引き続き「書くこと 選ぶこと」〜その2 です。

いまコピーライターたちはどのくらい
Chat GPTなどのAIを活用しているだろうか。

アンケートをとれば、おそらくはもう
「相当に」という結果を目にするのかもしれない。

私もことし、苦手な「ネーミング」提案を求められ
(……得意とした坂本和加はいないし)
Chat GPT 無料版のチカラを借りることにしました。

要求はごくベタなもの、そこでプロンプトは
「誰でもわかるカタカナ英語の組み合わせ」にして。
なんと30分もかからずに、要求を満たせそうな
いくつかの案を得ることができたのでした。

私の場合、AIとはネーミング以外の「仕事」の話は
しないと決めているのですが。
……「遊び」相手としては、面白いけどね。

実際、AIの「書く」コピーは、どうなんだろう。
いま現在、どのくらいのレベルまで来ているだろう。
しかし、これもおかしな問いで。
結局は「選ぶ」目によるわけだから。

あるコピーがAIの生成したものだったとして。
コピー年鑑やTCC賞の審査では、どうなるのだろう。

もう、そんなの関係ない。AIの生成したコピーでも。
それを「選ぶ」ことは、すなわち「書く」ことだ。
もはや、そんな時代になっているのかもしれない。

 * * * * *

ここからは、それと対照的な話。
コピーを「選ぶ」ことについての
とんでもないエピソードを紹介しましょう。

あのサントリー「山崎」の、誕生して間もない頃。
「シングルモルト」というウイスキーの
その意味と価値を知る人は、まだ少なかった時代。

われらが開高さんがCMタレントに起用されて。
そのナレーションコピーを西村佳也さんが書かれた。
ふたりはサン・アドの先輩後輩という間柄です。

撮影後に西村さんは開高さんの控室に呼ばれます。
そして(事前に見せていた)コピー原稿を返されます。

かなり長めの、ナレーションコピーの、最後の1行。
そこに二重丸が付けられ、あの独特の極太文字で
「すこぶるよろし」と書かれてあった。

それが、
「なにも足さない。なにも引かない。」でした。

このコピーは、35年経ったいまでも
もはや「変えようがない」
「コピーの中のコピー」に違いありません。

それをいちばん最初に
たぶん一瞬で「見抜いた」
コピーライター開高健、さすがです。

 * * * * *

無限無数のコピーを「書く」ことのできるAIと。

ただひとつのコピーを「選ぶ」ことのできる目と。

さあ、これから先は、どうなるのだろう?

 

NO
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6020 2025.12.15 一倉宏 書くこと 選ぶこと
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