リレーコラムについて

矛盾

早坂尚樹

昨年、TCC授賞式で受賞コメントを述べるという、
震え上がるような機会をいただいた。

力み過ぎてもいけない。
へりくだり過ぎてもいけない。

何を言っても失敗する未来しか見えなかったので、
素直に今、思っていることを話すことにした。

それが以下でした。
謝辞も、文意を保つためにそのまま掲載します。
(実際は緊張し過ぎて、一部とばしてしまいましたが・・・)

――――—–
この度は、素晴らしい賞をありがとうございます。

最近は、ミームやバズがもてはやされる中で、グランプリを頂けたのは、アート&コピーの表現を信じてくださったクライアントさんがいたからだと思っております。改めて野原さん、花王さん、ありがとうございます。

僕は映画のエンドロールの時間が好きなのですが、幸いにして、広告業界にはスタッフリストがあります。

世の中は無記名な仕事も多い中、僕らの仕事は「記名性」で残っていくことが、とても魅力的なことです。

だから、僕たちはその特権とも言えるスタッフリストを、〇〇CDの仕事と単純化せずに、もっと大切にすべきだと思うのです。

当然ですが、この仕事はチームがいないとできません。そして、それは、メディアが多岐に渡っていることで加速しているように思います。

今回のメリットの仕事もそうです。
栗田さん、関戸さん、辰野さん、BPチームのみなさん、電通クリエーティブピクチャーズのみなさん、JCスパークのみなさん、そして何より、花王さんチームの力なくしては、実現できませんでした。ありがとうございます。

しかし、その一方で、矛盾するようですが、チームの時代だからといって、チームプレイヤーに甘んじていてはいけないとも思うのです。

今回、僕は2番目に名前を連ねさせていただいてコピーを書いてますが、それは、このチームのエースにはなれていないということ。

もちろん、これだけのシリーズ、ひとつひとつの作品の、ヒーローは違う。僕がヒーローの原稿もあります。

でも、やっぱり、コピーライターはチームが頭を抱えているときに、1行で導けるようなエースでないといけない。

だから、次は何年かかるかわからないですけど、自分がチームのエースとしてこの舞台に戻ってこられたらと思っています。

そして、その時は、今回導いていただいたように今度は僕が仲間や後輩を連れて来られたらいいなと思っております。そうやって、受け継がれてきた広告業界のバトンをつないでいきたいです。

すてきな賞は、入社してから教えていただいたすべての先輩方のおかげです。ありがとうございました。

―――——

チームプレイヤーでいいという気持ちと、
隠しきれないエゴの存在。

自分なんてまだまだという思いと、
自分だってやってるのに!という思い。

きっと多くの人が、その間を揺れている。

しかも、自分で自分のことを発信できる今の時代が、
この感情の置き場をさらに難しくしている。

いかに魅力的に見せるかも大事だが、
沈黙を選ぶという美徳もある。

しかし、その美徳を追い求めすぎると、
声が多すぎる世の中では、相対的に埋没してしまう。

エゴイストを恥知らずだと思う気持ちと
自分には真似できなくて羨ましいと思う気持ち。

努力していれば誰かが見ていると信じたい気持ちと
発信しないと存在すら知られないのではと不安になる気持ち。

正解はなく、
今日もその間をいったりきたりしている。

でも、この矛盾は、抱えたままでいいのだと
最近は思うようになった。

大切なのは、
矛盾する自分に気づいていること。
極端にどちらか一方に振り切らないこと。
そして、きれいごとを言いながらも、どこかダサい自分がいると認めること。

だから僕は、今日もチームプレイヤーであろうと思うし、
隙あらば、エースであろうとも思っている。

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