振り返ってはみたものの
「コピー年鑑を読んで、その中でいいと思った作品10本をカラーコピー。
いいと思った理由を書き込んで、ホチキスでまとめて。」
2020年夏、我がファースト師匠・熊崎さんが、
配属直後の私にくれた、修行用の初課題。
はて、コピー年鑑とは…?
まさか、熊崎さんのデスクに鎮座する鈍器のようなそれだろうか…と思ったら、
本当に鈍器のようなそれでした。
とにかくでかい!厚い!重い!
そんなコピー年鑑を1度に2冊、
大きなリュックに詰め込んでは、埼玉と赤坂を往復する…
ぶつかりおじさんばっちこいデイズが開幕しました。
とはいえ当時はコロナ真っ只中。
千代田線も京浜東北線もがらがらで、ぜんぜん苦じゃなかった。
うわ〜これが社会か〜!と噛み締めるには人が少なく、
振り返っても妙に雑念のない、白くてすっきりとした毎日でした。
とにかくなにかしら、「書く」という動詞のお仕事に就ければ…
あわよくばそこに、自分の表現欲を満たす以上のやりがいがあれば…
と(当時はそこすら言語化できていませんでしたが)、
ぽやぽやしたまま飛び込んだ広告業界。
なのでもう、いざ入社してコピー年鑑を見ても、正直何が何やらで。
とにかく何もかもを掴めないまま、
つるつるつるつーると年鑑の上で目を滑らせていました。
掴めていない度合いを具体例で示すとですね、
未成年者の
飲酒は法律で
禁止されてるよ。
飲むならコレだね!
ホントはいい奴
New
ファンタ!
という神田さんの新人賞のページを読んで、
(神田さん、勝手な引用恐縮です…)
丁寧なカラーコピーののち、
「ホントとファンタで韻を踏んでいてすごい」
と書き記していました。
「そこなんだ?」と熊崎さんに驚かれたのを覚えています。
たしかに母音じゃなくて子音で踏んでる感じがオシャレですが、
今ならわかります、たぶんそこじゃない。
うーむ。せっかくのリレーコラム1本目、
新人時代のお話を一旦だばだばと書いてみたものの…
普通こういうのって、
「そんな時代を乗り越えて、今や立派なコピーライターに!」
みたいな、ベリベリサクセスストーリーの序章として書きますよね…
その後の私を書き記しておくと、
さすがにコピーとは何たるか、広告とは何たるか、
ありがたいことに先輩方にたくさん教えていただいたので、
「なるほど!」となり、
「なるほど?」となり、
「なんだこれ難しいな!」となり、
………今に至ります。
なのでいまだに名刺交換などで「コピーライターの…」と名乗るとき、
ソワソワ、それはそれはソワソワしてしまいます。
心なしかそこだけ半角カタカナみたいな早口になってしまいます。
あと、「冗談かとお思いでしょうが…」みたいに、
先方の要らぬ心中をお察ししそうになってしまいます。難儀……………
ということであらためましてですが、
博報堂クリエイティブ・ヴォックスの
コピーライターノ河口泰子と申します。
Adobeさんの「PDFラブレター」という広告で
昨年の新人賞をいただいて、TCC会員になりました。
(ええ、もう1年経ったんですか…?この恐怖が伝わりますか…?)
よくあの企画は冗談なのかそうじゃないのかわからないと言われますが、
自分でもわからないので悩んでいます。
日々、そんなことばかりです。
今回、TCC同期の東さんからバトンをいただいて、
その嬉しさに一度、ちゃんとした小躍りはしたのですが…
(東さん、執念のリレーコラム完走、本当にお疲れさまでした!
月曜朝、ついに全記事揃ったリレーコラムサイトを見て、
私は打ち震えながらひれ伏しました)
なんというか……リレーシステムといえば、
小学生のころ、仲良し3人で回してた交換ノートとか…
(たしか、私以外の2人がケンカして脱退しました)
中学生のころ、peps!というサイトで回してたリレー小説とか…
(全員が、キラキラハンドルネームで互いを呼び合っていました)
いろんな記憶がよみがえって、ちょっと……これまたソワソワしてきました……
ソワ…ソワワ……
もし誰かが私のフルネームを検索したら、
このリレーコラムが出てくるということでしょうか?
というか、私のフルネームを検索してくれる人がいるんでしょうか?
そうだとしたら嬉しいです。
大事にしたいので、ぜひ名乗り出ていただけますと……
勇気を出して、明日も書きます。
よろしくお願いいたします。
5913 | 2025.06.30 | 振り返ってはみたものの |