ロック
新入社員の頃の話です。
僕がまだ入社したばかりの頃、よく仕事をさせていただいたCDがいたのですが、
その方は音楽好きで、特に海外のロックバンドをこよなく愛していました。
ロック好きなだけでなく、本人も常にロックな雰囲気を纏っていて、
撮影現場には、サングラスと、肩にかけた革ジャン、そして地面につくぐらい長いマフラーを風に揺らしながらいつも颯爽と現れ、
ある日は、「音と戯れてきます」と言ってライブに行くなど、
見た目も話し方も、とにかくロックスターのような空気感を纏っていました。
それだけでなく仕事上でも、そのロックな世界観が多々入ってくるのです。
最初の打ち合わせの終わり際、CDが言いました。
「じゃまた来週、俺とセッションしようか」
CDは、打ち合わせのことを「セッション」と呼んでいました。
僕にとって初めての仕事だったので、
「へぇー、この会社では、会議のことをセッションって呼ぶんだ」
と思っていたのですが、他に誰もそう呼んでいる人はいませんでした。
さらに別の日の打ち合わせでは、
「う〜〜ん。もっとさ、『オーディエンス』に届ける気持ちで書いてみよっか」
「ここのセリフのやり取りは、もっと『jazzy』な感じにしよう」
というようにコピーのダメ出しの中にまで、音楽用語が入ってくることがあり、正直そのニュアンスがわからないまま「セッション」が終了する時もありました。
そんなCDとの打ち合わせでは、毎回いくらコピーを書いて持っていっても全く通らず、
具体的にどう直していけばいいかも理解できていないので、これはどうしたものかと深刻に悩んでいました。
次々とボツになっていくコピーの残骸を見て悩んだ僕は、ある日の打ち合わせでこう言ってみました。
「今日はちょっとこう・・・『メロウ』な感じで書いてきました」
恐る恐る出したそのコピーを見て、CDは言いました。
「いいじゃん。」
その日、嘘のようにコピーが通ったのです。
音楽用語を用いてコピーを説明すると、コピーの通過率が高くなることを発見した自分は、
それから一時期音楽用語を頻繁に用いて持ち寄りをするようになりました。
「ちょっと『ロック』感を強めるとこんな感じですかね」
「あー、いいね。掴んできたね」
その日から、僕たちのセッションは大いに盛り上がるようになりました。
(現在の僕は、このような姑息な真似をせず真剣にコピーを書いています)
(登場するCDについては大変リスペクトした上で書いております)
さて、次回のコラムは、今年のTCC新人賞の同期で、最高新人賞を受賞した平田純一さんにお願いします。
平田さんとは、名前が僕と同じ「平田」ということで勝手にシンパシーを感じております。
平田さんが最高新人賞を獲ってしまったことにより、必然的に僕が「最高でない平田」になってしまったことに対する思いはあるのですが、平田さんはめちゃくちゃユニークな上にとても優しく接してくださる方なので、同じ平田として完全に敗北を感じています。
急遽のご依頼にも、同じ平田の頼みなら、と引き受けてくださりありがとうございました。
それでは僕のコラムはここで終了です。
読んでいただき、ありがとうございました!