リレーコラムについて

ジェンダーとコピー

一倉宏

ことしの秋は2つのドラマに深くハマりました。
TBS 『じゃあ、あんたが作ってみろよ』 
NHK夜ドラ 『ひらやすみ』 です。

特に「じゃあつく」は
(この省略は好まないけれど慣例に従って)
最終回までの視聴率も配信での再生回数も
記録的な数字といいますから
同じくハマって観た人も多いことでしょう。

すでに多くの絶賛コメントが上がっているので
ここに重ね書きすることはやめておきます。

だけどやっぱり…… 竹内涼真 演じる 勝男が
毎回、少しずつ気づいて変わっていく。
そのたびの読後感が、よかったなあ。
チクリとする自省と。
ホロリとする純真と。

この2つのドラマは、
高円寺と阿佐ヶ谷を主な舞台にしていました。

立ち飲みの酒屋、もつ焼きの居酒屋、おでん種の蒲鉾店も
商店街にあって( 以上「じゃあつく」 )
JR駅近くにある釣り堀(「ひらやすみ」)も
みんな近隣住民にはおなじみです。

加えて「男性が料理をつくるシークエンス」が共通項で。
これにも自己投影してしまった。

この私は、その地元だし、料理好きだし。
ますます没入して観ていたわけだけど。
それはあくまでも、個人的な感情移入として。

2つのドラマに共通する、時代性。
特に、男性主人公のキャラクターが共感を呼び
ジェンダー観の今日性が鮮やかだった。

これは、ちょっと、もしかしたら。
今後の広告クリエーティブに
なんらかの影響を及ぼすのではないかな。

そんな気もしました。

賢明にして敏感なるみなさんのココロは
すでに動いているはずです。

……これだけバズった、となると
商売気もムクムク頭をもたげるだろうし。

竹内涼真にキャスティングのオファーは
当然のこと殺到しているだろうし。

岡山天音もそうとう好感度上げたし。
森七菜はすごい逸材だと証明されたし。

……いやいや、そっちじゃなくて。

やはり人物像とセリフに込めた「時代性」が
私たちを惹きつけたのだと思うのです。

 * * * * *

昨年のHALL OF FAME 記念の
「コピー100TEN」でも思い知らされたこと。
この前の虎ノ門広告祭でのトークイベントでも。

それは、自分のいままでやってきた仕事、
コピーを並べて振り返ってみると。

そこここに、古い時代性、不適切があると
気付かないわけにはいきませんでした。

かつてメジャーに流通して話題となり
私の代表作のようになっているコピーでも。

いまの時代だったら。
ルッキズム、ジェンダーステレオタプ、と
批判され炎上していたかもしれないのです。

広告は時代を描くし、
逆に、描かされてもしまう。

 * * * * *

それにつけても。
2つの原作マンガの作者がじつは夫婦だった!
とは、後から知ってビックリしたわけですが。

そうか、土地勘とか空気感とかが近かったのは
そのためだったのかと。

でも、それだけじゃない。
「偶然」のシンクロ、などでもなくて。

「いまの時代」に選ばれる
「必然」がそこにはあったから。

これからの広告のヒントになりそうな
「なにか」があったと思うのです。

 

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