リレーコラムについて

書き出し小説

鈴木拓磨

「芝生で荒れ狂うホース。」

これは僕が2015年に『C-1グランプリ』でグランプリをいただいたコピーである。
お題は「男に、座りションを決意させるコピー」。
応募を始めて9年、念願のグランプリを下ネタで射止めたのだった。

僕がこのコピーを書けたのは「書き出し小説」を書き続けてきたからだと思っている。

書き出し小説とは天久聖一さんが提唱した「書き出しだけの小説作品」。すなわち「あるのは冒頭だけ。続きは読み手のイマジネーション次第」というミニマムで新しい文学スタイルだ。
本拠地はウェブサイト「デイリーポータルZ」で2012年から続いている読者投稿コーナーである。
書き出しだけならどんな無茶な設定も書ける。続きを書く必要がないから無責任に書ける。そんな、素人文芸として非常に秀逸なフォーマットを天久さんがつくりだしたのだった(素人といいつつ、プロの小説家も投稿していたりする)。
投稿作を編集した書籍が2冊出版されている(1冊目2冊目)ほか、イベントも何度も開催されている。
どんな作品が集まっているかは、ぜひリンク先で読んでみてほしい。拙作もときどきあります(ペンネーム suzukishika)。

6年近く続いている企画であるから作品の幅はかなり広がっている。「その後を想像させるような書き出し」という当初の枠に留まらず、それだけで物語が成立している「1行小説」的なものや「自由律俳句」っぽいものなど、 けっこうなんでもアリ。
ただ、変わらないのは「短いフレーズでいかにイメージを喚起するか」というところだと思う。ビジュアルとストーリーが同時に浮かぶような短文。読み手の想像に対して開かれている短文。企画者・選者である天久さんもいつかそのようなことを仰っていた。
そして「芝生で荒れ狂うホース。」は、まさにそんなコピーだったんじゃないかなと思っている次第だ(実際にはふたつの映像がオーバーラップするような構造であるが)。

俳句や短歌を楽しんでいるコピーライターの方は多いけれど、僕にとっては今のところ、書き出し小説がそんな感じ。

次回の「書き出し小説」〆切は明日8/10(金)の正午。
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