Antipasto(前菜):「嘘のミルフィーユ」
こんばんは。元シェフのコピーライター、齋藤大樹です。
現在、夏休みということで北イタリアを旅しています。
本日はヴェネト州のパドヴァからお届けします。
2本目となるコラムは「Antipasto(前菜)」。
今回は、人生の前半――学生時代について語っていきたいと思います。
なぜか私は、小学生の頃から料理が大好きでした。
自宅でひとり留守番をしているとき、
お腹が空けば煮干しで出汁をとって味噌汁を作ってみたり、
女の子たちに混ざって東京ガスの料理教室に通ってみたり、
NHK番組「えいごであそぼ」の番外編で
スパニッシュオムレツという料理を知るやいなや、見よう見まねで作ってみたり……。
「飲茶」という文化があると知ったときは、
親に頼み込んで本格的な中華料理店に連れて行ってもらったこともあります。
伝説のテレビ番組「料理の鉄人」にも多大な影響を受けました。
料理バトルを繰り広げるスターシェフ達が本当にかっこよかったのです。
その後、私は自然とシェフを志すようになり、
高校卒業後は迷わず調理師学校へ進みました。
入学後は、料理の勉強の一環としてクラスメイトたちとレストラン巡りを開始。
アルバイトで稼いだお金のほとんどを食べ歩きにつぎ込んでいました。
ちなみに、人生初リストランテは「リストランテ カノビアーノ」。
初グランメゾンは、「シャトーレストラン・ジョエル・ロブション」。
高級レストランの煌びやかな店内、
今まで味わったことのない料理の数々に圧倒され、
私はどんどん西洋料理の世界に魅了されていきました。
これは調理師学校生の役得ですが、
高級レストランを訪れた際に
「調理師学校に通っています!」とサービスの方に伝えると、
かなりの確率で大盤振る舞いのサービスを受けられるのです。
その一例をご紹介します。
・中ランクのコースを頼んだのに、無料で最上位コースにアップグレード
・コースに載っていない謎のメニュー試食
・本来はオプションであるはずのトリュフがほぼ食べ放題
・チーズやパンの食べ比べ
・厨房内の見学ツアー
・調味料やメニュー、書籍などのお土産
・著名シェフと厨房で記念撮影
すごいですよね。
このようにとにかく、調理師学校生はレストランで優遇されていたのです。
人手不足である飲食業界の未来を担う人材だから、
優しくしてくれたのではないでしょうか。
しかし、この超VIP待遇に味をしめた私は(料理だけに)、
調理師学校を卒業して料理人になってからも、
高級レストランを訪れるたびに「服部栄養専門学校に通ってます!」と嘘をつき、
手厚いサービスを受けまくっていました。
同じお店に通いすぎると怪しまれるかもしれないので、
訪問する時期をずらしたり、所属の調理師学校名を変えるなど、創意工夫も凝らしました。
どこのレストランでも自分を調理師学校生と偽り、
嘘に嘘を重ねまくっていました。
料理人になって3〜4年は、そんな「嘘のミルフィーユ」状態。
ここまで見事に重なったミルフィーユも中々ないことでしょう。
今では嘘をついたことを反省しております。
当時お世話になったレストランの皆様、本当にすみませんでした、、、。
しかも、料理人を辞めてしまったため、全然飲食業界の未来を担えずにごめんなさい、、、。
でもあのときの超VIP待遇で学んだことを、
今はコピーライターの仕事に生かして(?)頑張っている私です。
どうかご容赦いただけるとありがたいです。
今回もお付き合いいただき、ありがとうございました!
明日のコラムは「Primo Piatto(第一の皿)」です。
私の社会人第一フェーズである料理人時代について書く予定です。
エミリア=ロマーニャ州のボローニャからお届けします。
「ボロネーゼ」で有名な街です。
それではまた明日。
Ciao!
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