リレーコラムについて

99%報われない努力

森俊博

たつみも、ほめよう。

というコラムを読んでいたら、
わりと大勢の人前で巽をほめたことを思い出した。
巽がCRに異動して間もないときに、糸井重里さんから賞をもらった。
ほぼ日手帳のコピーを募集するコンテストで、
なんとグランプリを受賞したのだ。

そのことを、会社の年度初めのキックオフか何かで、
スピーチのネタとして話したことがある。

もし巽が受賞しなければ、
賞に応募したことすら誰にも知られることはなかった。
夜、人が少なくなったオフィスでコピーを考えていたことも、
土日にノートやパソコンに向かっていたことも、
寝る間を惜しんで、締め切りギリギリまで粘って書いていたことも。
たまたま受賞したから僕らは巽の努力を知ることができたけど、
本来ならそれは、99%報われないはずの努力だ。
公募の賞なんて、宝くじみたいなもの。
受賞したことはもちろんだけど、
そんな努力をしていたことに拍手を送ってほしい。

といった話をしたら、誰かから巽が泣いていたと聞いた。
コピーライターが人を泣かせるのなんて簡単である。
これを読んでまた泣いているかもしれない。ちょろいもんである。

人知れずしてきた努力を認められたとき、人は涙するのだ。

とはいえ、最近はそんな努力をする人が減ってきているのではと感じる。
世の中の流れとか、会社の環境もあると思う。
「割りに合わないことはやるな」という暗黙のプレッシャー。
生産性や効率を考えれば、99%報われないことをするなんて、
今の若い人たちには理解できないのかもしれない。
「無駄な努力はしたくない」という意味に近いことを、さらりと言われることもよくある。

でも、そもそも自分のための努力は人前でするものじゃない。
誰かに言われなくても、誰も見てなくても、誰にもほめられなくても、
99%報われなくても努力できる人が、1%の運を掴むことができる。
そして、誰も知らないところでしてきた努力は、結果が出た時に誰もが知ることになる。
それは、クリエイティブやビジネスの世界だけじゃない。

11月3日、オートレースの日本選手権で森且行選手が優勝した。
デビューから23年目、46歳のベテラン選手。元SMAPの森くんだ。
その快挙を称える記事のひとつにこんな一文があった。

「優勝は運、そこにいたのは実力」

優勝候補の2人が転倒して、転がり込んできたSG初優勝。
でも、体力も衰えた46歳のベテランが決勝のスタートラインにいたこと、
運を掴める3番手をキープしていたことは、紛れもなく実力だ。
そして、そこに行くために彼がどれだけの努力をしてきたのか、
考えなくてもわかることだからこそ、日本中が祝福したのだろう。
同い年で苗字も同じ「森くん」の優勝は、個人的にも胸に響いた。

運も実力のうちとはよく言うけれど、努力なき人に運は掴めない。
そもそも運を掴める場所へ行こうとしなければ、何も始まらない。

そういう意味では、巽は運も強い。
糸井さんに賞をもらったこともそうだけど、
同じ年に新人賞をもらい結婚して赤ちゃんを授かるほど強い。
コピーは時々とっ散らかるし、悩みすぎて瀕死の時も多いし、
ものすごく大事な日に寝坊して遅刻したりするけど、
みんなが応援したくなるのは、
いいものを書きたい!という熱量と努力を感じるからだと思う。
だからこそ、いつも運を引き寄せるのかもしれない。知らんけど。

あ、あと、巽の新人賞が、
僕がCDの仕事じゃなかったことは実はちょっと残念だった。
だからそのうちまた、ガッツリ仕事しましょう。
1%報われるかどうかの、ヒリヒリした面白い仕事を。


―――――――――――――――――――――――――――
ということで、巽洋子さんからバトンを受けとりました。
電通名鉄コミュニケーションズの森俊博です。
久しぶりのコラム、とりあえず巽のコラムから書いてみよう
と書き始めたら巽で終わってしまった・・・。
特にテーマなく、思いついたことを書けたら書きます。
一週間続くかどうかわかりませんが、よろしくお願いします。

NO
年月日
名前
5816 2024.12.09 伊藤みゆき 2024年個人的ベストコピー
5815 2024.12.06 山田大輝 ジェノベーゼ
5814 2024.12.05 山田大輝 センサー
5813 2024.12.04 山田大輝 嬉野
5812 2024.12.03 山田大輝 祖父の葬儀
  • 年  月から   年  月まで