リレーコラムについて

TCC Café

富田克人

気に入っていた古い喫茶店が閉店しました。

会社から少し歩いた場所にある薄暗い、深いソファの、カフェというよりはバーみたいなそんなお店。
夏の夕方には差し込む西日が独特で、まるで何十年も前にタイムスリップしたような感覚に襲われるお店でした。

ときどき、文庫本一冊を胸の内ポケットにいれて、電話のジャンジャンなるデスクを離れてふらりとその喫茶店まで歩きました。

お昼が夕方に変わるいちばんだるーい時間に、ホットコーヒーをブラックで飲みます。
おいしいのかどうかはわかりません。お客さんがほとんどいないということは、多分おいしくはないのでしょう。

持ってきた文庫本、特に読まない日もありました。
頭と心と体にまとわりついたイガイガを払い落とす、それだけで十分だったのです。

僕にとってその古い喫茶店は、自分をニュートラルに保つ貴重な場所でした。


スターバックス・コーヒーのコンセプトに「サードプレイス」というものがあります。
ファーストプレイスは「家」、セカンドプレイスは「職場」・「学校」。
そして、そのどちらでもない第三の空間が「サードプレイス」。

「サードプレイス」は、アメリカの社会学者レイ・オールデンバーグが「The Great Good Place」という著書のなかで提唱した概念らしいです。
その代表が、イギリスのパブや、フランスのカフェ、ドイツのビアガーデン。都市のなかで人々がニュートラルな自分を取り戻せる場、そして、多様な人間関係が発現する出会いの場として機能すると説明されています。

僕にとっては、その古い喫茶店はサードプレイスだったのだと思います。
出会いはなかったですが。

思い返してみると、自分は、学校でも、職場でも、家でもない、サードプレイスが好きな人間なようです。
別にスポーツが好きではないのに、小学校・中学校・高校と常に部活に所属していたし、大学ではサークルにちゃんと入ったし、

そして、現在も劇団に所属しています。

会社も職種も違う社会人のバーチャル劇団です。
やっているのはもっぱらアニメーション制作で、YOUTUBEにアップして、世界に公開しております。

仕事に活かそうとか、小金を稼ごうとかそんな気持ちではやっていません。

「じゃあ、なんでそんなことやってるの?」

と聞かれることもあるんですが、「好き」「楽しい」というのもありながら、自身がサードプレイスなコミュニティを欲しているというのが正直な答えです。
会社でも家でもない場所がないと、ちょっと息苦しくなってしまう。
しかもその第三の場所で蓄積や達成ができることが、他の生活にもプラスの影響を与えてくれる気がする。
…あくまで「気がする」。

僕のちょっと偏った実感かもしれませんが、「一生の友達」ってサードプレイスみたいなところでできやすいような気がするのです。
日常の役割をいったんニュートラルにしてできた関係。ここで信頼しあえるというのはある意味、人間性を信頼しあっているということ。
いいすぎかもしれませんが。

むかしにくらべて、会社とか、家族とか、地域とかが、流動的になっていくなかで、「人間性」同士でつながれるコミュニティは、貴重ですよね。

部活・サークル・習い事・ボランティア・大学・バー・カフェ・シェアハウス、そういう第三の場所・コミュニティが、これからセーフティーネットみたいな存在になっていくんじゃないのかなあと思ったりします。

と書いていて、自分にとってTCCもサードプレイスだということに気づきました。

うん。TCC CaféとかBar TCCとかあったらいいですね。

会員だけしか入れないんじゃなくて、広告が、コピーが、クリエイティブが好きな人なら誰でも楽しめる場所。

コピー年鑑が全部置いてあって、CMがずっと流れている。たまにマスターがコピーライターだったりする。

メニューには、

・恋は、遠い日の花火ではない。サントリーオールド –800円

素敵ですね。妄想が広がります。

が、むなしいのでここらでやめますね。

ということで、閉店した喫茶店の話から、なんだかよくわからない話になりましたが、テーマは自由のリレーコラムなのでお許しください。

ではまた明日。

NO
年月日
名前
5692 2024.04.21 長谷川輝波 言葉オブザイヤー@ヘラルボニー
5691 2024.04.20 長谷川輝波 言葉オブザイヤー@韓国の街中
5690 2024.04.17 長谷川輝波 言葉オブザイヤー@新宿ゴールデン街
5689 2024.04.12 三島邦彦
5688 2024.04.11 三島邦彦 最近買った古い本
  • 年  月から   年  月まで