リレーコラムについて

高田聖子ちゃんのお家に行ったのは

中山佐知子

高田聖子ちゃんの家にお邪魔したのはもうずいぶん以前のことになる。
とっくに15年くらいが過ぎている(ような気がする)
たいへん厚かましい話だが、聖子ちゃん本体とお家を借りて
ラジオCMの録音したのだ。

高田聖子ちゃんというのは劇団新幹線の女優で
実家は奈良にある。奈良の法隆寺の中にある。
裏は確か若草伽藍とかいってたっけ。
法隆寺の塔頭が聖子ちゃんの家だ。

行ってみて驚いたのは、ドアというものがひとつもない。
そりゃそうだ、お寺なのだから。
玄関の扉も上半分は障子になっていて
鍵はどうやってかけるのかどうにもわからない。
お母さまの話では、夏は廊下に蚊柱が立ち
秋は落ち葉の吹きだまりができるのだそうだ(廊下にですよ)
お寺に住むというのはそれ自体が修業のようなものらしかった。

聖子ちゃんの家は玄関の鍵が曖昧なかわりに
門の鍵は存在感が巨大だ。
その門は確か国宝の東大門だったと思うが、
なにしろ門が古いから鍵も古い。
30センチの物差しよりも長い鉄の棒で
当時視力の良さを誇った私がどのように眺めても
鍵というよりは単なる鉄の棒で
しかも古い証拠にザラザラに風化し、私はそれを見るたびに
「鉄は朽ちる」という言葉を思い出したものだった。

聖子ちゃんはその鍵と呼ぶ鉄の棒をいつもカバンに入れていて
私はときどき酔っぱらうと面白がってわざわざカバンから出してもらい
まわりの人に見せびらかして遊んだ。

聖子ちゃんの家をお借りしたライブな収録は
日暮れ前にはなんとか終わり
最後のナレーションは家の外で録音したのだが
飼い犬のハッチが我々をあやしんでわわわん、わわわんと鳴く声も
しっかり録音されており
いまでもその古いCMを聴くことがあると
障子の玄関や、道を隔てた池、大きな松の古木、
それからいまは亡きハッチのことをなつかしく思い出す。

ところで、私はいま
このリレーコラムは業界のHPに掲載されるので
高田聖子ちゃんが絶対に読まないという前提で書いているのだが
もし読むようなことがあったらどうしよう…

高田聖子ブログ:http://ameblo.jp/shoko-takada-blog/
高田聖子8月のプロデュース公演:
http://www.theaterguide.co.jp/search_result/paid/detail.php?id=16030

あ、6月のTokyo Copywriters’ Street ライブにも出演します:

NO
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名前
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