リレーコラムについて

おばさんに話しかけられる

沢辺香

一昨日のコラムを実家の母が読み、メールして来ました。
「夜、目つぶって歩くって危なくないの?」
…心配してくれていました。 親ってありがたいです。
ところで、母からの連想、というと彼女に失礼ですが、
私はよく年配の人に話しかけられます。

例えば近所のスーパーの野菜コーナーで、横にいたおばさんAが
「これ、何県の?」とか突然聞いてくこられるわけです。
一瞬ひるみますが、
「あっ、この箱のは長崎産みたいですよ」とか答えます。
そしてまた別の日、鮮魚コーナー。
「今カツオおいしいわよねえ〜!タタキ、もうなさった?」と
品のいいおばさまB。 びっくりしつつも、
「ええ〜今夜しようかなって思ってます〜」なんて答える私。
話しかけやすいオーラがあるのでしょうか。

大阪にいた学生の頃、ミナミの「虹の街」という地下街
(いわゆるファッションモールです)の下着専門店で、
(恥ずかしいですが)3枚よりどりのパンツを山盛りにした
ワゴンを掘り返して、あれこれ迷うのが結構楽しみでした。
ところがやっぱり、こういう安売りコーナーには3枚も素敵なのが
ないのです。 気に入らないパンツはいらないけど、
やっと掘り出した珠玉の一枚はぜひ買いたい。
でも一枚だと割高になるし…(貧乏学生の逡巡をご想像ください。)
そんな時、大阪のおばちゃん・Cさんが現れたのです。
「お嬢ちゃん、おばちゃんと半分コせえへん?」
「!」
渡りに船、とはこのことです。
彼女は、自分も気に入ったのが3の倍数枚もないから、
二人のを合わせて3の倍数枚にして一緒に買わない?と言ってる訳です。
そんな提案をされちゃうことに驚きましたが、
ちょっとうれしかったりもして。

…ここで告白。 
ごめんなさい、実はこのエピソードのおばちゃんCとは、私自身のことでした。
当時二十歳だったからまだおばちゃんじゃなかったけど、
確かに自分はこのような行動に出、そして実際は、私が話しかけた人は、
「結構です」と怪訝な顔で言ってお店を出て行ってしまったのでした。
その時私は、ちょっと、というかそれなりに傷ついて、
それ以来、あまり見知らぬ人に話しかけたりしなくなりました。

だけど今こうして書いてみると、なぜ自分がよく話しかけられるか、
の答えが何となくわかった気がします。

話しかけてくれる人はきっと私のことを、
必ず答えを返す人だと思っているから。

もし私が過去に戻り、パンツを選びきれず悩んでいる
ハタチの私を見たらやっぱり話しかけてしまうと思います。
そして話しかけられたハタチの私も、きっとOKすると思うんです。

あ〜こんなこと書いて非常識かも
・・・また母からメールが来そうです。

NO
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