リレーコラムについて

23時の牛丼

有元沙矢香

23時。私は家で牛丼を食べている。先週の水曜日のダウンタウンを流しながら、なんとも言えない感情を押し込むように、牛丼をかき込んでいる。

 

昨晩はとてもいい夜で、また虎ノ門広告祭に出向き、福部さんと榎本さんと菅野さんのセッション『時代のせい。』を聞いてきました。福部さんの話は本当にわかりやすく、聞いていると自分も傑作を生み出せそうな気がしてきてしまいます。

いい仕事には、「普遍性」と「時代性」があるという話。例えば、キリンビール晴れ風なら、「ビールは喜びを分かち合う飲み物」という普遍性と、「お花見や花火大会が存続の危機にある」という時代性を掛け合わせて、「みんなが同じ方向を見て、喜べるビール」という商品規定をしていたと。なるほど、晴れ風の桜の保全活動は商品規定から始まっていたんですね。ビールのCSR的なことをCMでもやっているのが珍しく、だからこそ新鮮に感じていたのですが、その話を聞いて納得でした。アートディレクターは普遍が得意で、コピーライターは時代が得意。メロディは普遍、歌詞は時代だから歌は歌詞から腐っていくというのも面白かったです。

で、ここまでが第一部。第二部は余興のようなコーナーで。ヒットを生み出すクリエイターと、その時代に頭角を表す芸人さんはどこか似ていて、全部時代のせいだという話なのですが、例えがとても秀逸。セッションを学びの場で終わらせず、こうしてお客さんを楽しませるエンタテインメントまで用意している福部さんはさすがだなと思いました。

そして、その回の結論がこれからは女性クリエイターの時代という話で、私がそこに含まれるかは置いておいて、勝手に勇気づけられ、さらには今日、日本初の女性総理大臣が誕生。なんだかとても前向きな気分でいつもよりもテキパキと仕事を進めて、横浜へ向かいました。前のコラムにも出てきた朝日放送の桒山さんにお誘いいただき、昨年のM-1グランプリの4分PVで「リライト」を使わせていただいたASIAN KANG-FU GENERATIONのライブがあったのです。

虎ノ門広告祭で熱い想いを語り合い、ここでリライトを聞けば、これ以上に今年のM-1に向けて心の準備が整うことはないだろうと、ワクワクしながら向かいました。横浜まで1時間半。意外と遠い。でもリライトのため。

まずはオープニングアクトに横浜の新進気鋭のバンドyubioriが登場。こんな機会でもないと新しいバンドを聴くきっかけもないよなと楽しみながら1時間ほど経ち。次は、対バン相手の北アイルランドのバンドAshの登場。こちらも初めて聴きましたが、どの曲もキャッチーで乗りやすい。でも内心は早くリライト聴きたいなと思ったりもして。そしてついにアジカン登場。ソラニンから始まり、テンションも上がります。青春時代を思い返しながらいろんな曲を聴いて、聴いて、聴いて、終了。

そりゃリライトはアンコールですよね。アンコールが始まると、まずはAshの曲をAshのメンバーと一緒に。よし、最後の最後に…やりませんでした。

なんでやねん!

終了後、思わず桒山さんと声を合わせてつっこんでしまいました。が、正直これ、アジカン悪くないよなと。私たちが勝手に期待しすぎたせいで、肩透かしを喰らった感じになっているだけだよなと。そういえば芦田愛菜ちゃんもガッカリするのは勝手に自分が期待したせいだって言ってたよなと。1.5時間の帰り道に話し合って結論に至り、ビールを飲んで帰る元気もなく、家で牛丼へと辿り着いたのです。

 

4日後。Oasisのオープニングアクトで歌うリライトがXで流れてきました。

 

 

 

 

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