リレーコラムについて

2002→2022

宮保真

2002年。私は28歳で、一度も定職に就いたことがなかった。

高校を出て浪人、大学で留年、就職活動もしなかった。

いや、学生時代に一度だけ就職活動をした日があって

親が買ってくれたリクルートスーツを着て説明会?の会場まで行き、

中には入らず引き返して近くの店で昼からビールを飲んだ。

 

18歳からの10年間でいちばん時間を過ごしたのはパチンコ屋。

金と運さえあれば毎日閉店まで台の前に座っていた。

金がなければレンタルビデオ屋で映画を借りて観る。

もう何を観たいか選ぶのも億劫で

店内の端の棚の、上の段から順番に借りて観ていた。

 

当時の恋人になんだか振られそうな予感がして

自分に何が足りないのかを真剣に考えた。

俺が煙草を吸うからだと思い至った。それ以外に見当たらない。

声高に禁煙宣言をしたが、状況は何ひとつ改善しなかった。

 

そうか働いてないからか、と気づいて

たまたま見つけたコピーライター募集に応募した。

 

生まれて初めての正社員採用面接では、

渡された名刺をそのままズボンのポケットに入れた。

面接官が最初に言った言葉は、「ここは土足禁止です」だった。

その時の私は、数年ぶり二度目のリクルートスーツに

中学生みたいな真っ白い靴下を履いていた。

正装ならホワイトソックス。何の疑問も持っていなかった。

 

面接官は面倒見のいい人で、面接もそこそこに

私に正しい挨拶の仕方やスリッパへの履き替え方、

スーツ着用時の靴下の色まで教えてくれた。

彼が最後に言った言葉は、「絶対採用しないよ」だった。

私は清々しい気持ちで面接を終え、

その会社を出るなり玄関先で煙草を一本吸った。

 

何か大きな間違いが起こって、その会社から採用の連絡がきた。

それが私のコピーライターとしてのスタートである。

 

ここを読んでいる方の中には、

コピーライター志望の人もいらっしゃるだろうと思う。

コピーライターとして何かを語る方々には

どこに出しても恥ずかしくない道を歩いてきた人や

とても魅力的な道のはずれ方をしてきた人が多いから

私は、そうじゃない方の人たちに向けて、

そうじゃない方の話をできたらと思っている。

 

コピーライターという職業は、とっても懐が深いのだ。

こんな奴がやってるなら自分だって、と思ってもらえたら嬉しい。

でも間に合うなら勉強と就活はちゃんとしたほうがいいですよ。

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