神様にいちばん近い人
うちにはコピーライターがいなかった。
わたしの勤める会社は、インターネット広告代理店で、社員の平均年齢は、33歳。
所謂ザ・コピーライターの先輩は、ひとりもいなかった。
そんななか、 初めて自分のコピーを見ていただいたのが、
コピーの神様、仲畑先生だった。
人生こんな贅沢なことがあっていいのだろうか。
ふざけるな!と言う声が聞こえる。
コピーライター全員に嫌われてしまってもしょうがないと思う。
仲畑先生に初めて自分のコピーを見ていただいたとき、それはそれは緊張した。
そして、なんだか全てを見透かされているような気がして怖くなった。
仲畑先生には、
きっと、コピーを通して、わたしがどんなふうに生きてきたのかが、
透けて見えてしまっていたのだと思う。
恥ずかしいことも、知られたくないことも全部バレてしまう。
神様の前で、取り繕えるはずがないのだ。
コピーをかくのは、こわいことだ。
コピーを見せるのは、もっと、こわいことだ。と思った。
それを知ってて、この仕事をしているコピーライターの先輩たちは、本当にすごい。
そして、やっぱり、ちょっとおかしいのかもしれない。(ごめんなさい、最高の褒め言葉です。)
わたしも自分の全てを曝け出す覚悟で、コピーを書かなきゃ。
そう思ったことを忘れたくない。
絶対に忘れたくないのに、
普通に生きているだけでも、どんどん元の取り繕った自分に戻ってしまうから困りものだ。
だから、わたしは自戒を込めて、今、この話を書いている。
そして、そんなときには、仲畑先生のお話を聞きながら、メモさせていただいたノートを何度も読み返す。
(仲畑先生のしてくださるお話は、どんな話もメモしたくなってしまう。)
そうすると、自分を取り繕うとしてできた殻が、またちょっとづつ剥がれていく気がする。
仲畑さんに出会う前の自分には、戻りたくないなあ。
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