リレーコラムについて

打ち合わせ

岩田泰河

たまに、「いつコピー考えてるんですか?」と聞かれることがあって、答えに詰まる。「朝早く起きてパソコンに向かっているよ」とか、「移動中に考えているよ」とか、「思いつかない時は徹夜するよ」といったスマートな答えをしてみたい。でも自分は椅子に長時間座るのも苦手だし、移動中は本を読んでいるし、夜もすぐ眠くなるし、そんなにかっこいいことは言えない。

じゃあ、いつコピーを考えているかといえば、いちばんはオリエンのときで、次はたぶん打ち合わせ中だと思う。あとフィードバックもらう時も。クライアントやチームメンバーが話していることを耳に入れながら、その場で思いついたことを必死に書き留めている。相手からすると、たくさんメモを取っているまじめな人に見えているかもしれないが、すみません。実際は聞いたことをアイデアの着火剤として、その場で考えを広げています。

そこから一人で手を動かし、資料に落とし込む時間はとっているけど、コピーを書いている時間は、考えるというより仕上げたり磨いたりという感覚。なので、考えるって感じでもないかな…と思う。

そうは言っても、打ち合わせ中にコピーを考えるって、それまでに準備をしてこなかった人みたいで恥ずかしい空気ありませんか?「一人で考えを深める時間はなかったのか?」と思われそうで、若干抵抗がある。

でも、事前に準備をしないでいいとか、その場で場当たり的に書けばいいという意味ではなくて、打ち合わせ中に、次の打ち合わせで持っていくコピーを書きはじめてもいいんじゃないか、と思っている。

打ち合わせって、その案件に関する情報が絶えず流れてくるので、脳が刺激されるし、企画に最適な時間だと思う。一人でいるときみたいに集中が途切れることもない。その場で思いつかなかったとしても、オンラインの打ち合わせだとレコーディングもできるので、あとで再生しながら企画すると、記憶が思い出されてコピーも出てきやすい。

そうして打ち合わせ中にバーっとメモしたことばの断片を、翌朝とかに落ち着いて整理すると、自然と考えがまとまっていく。いちおうことばを仕上げたり、資料っぽくまとめたりはするけど、体感、8割は前回の打ち合わせ中に考えた内容をなぞることで、次の打ち合わせを迎える。

と書いてはみたものの、じつは、これもかっこつけていて…

最近は、その場で思いついたことを会議チャット欄にどんどん書き込んでいます。

数日後に考えを整理して持ってくるのではなく、その場で「こんなのどうでしょう」「〇〇的なコピーってありえますか」「仮字コンテイメージです」とチームにぶつけてしまう。おもしろくなければ無視されるし、おもしろければ誰かが拾ってくれる。しかも、断片の段階で反応されるってことは、骨子だけでおもしろいってことなので、けっこう骨太なアイデアの可能性が高い。

即興で思いついて即興で伝わるものって、じつは無駄なロジックが削がれていて、本質的なコピーになりやすいのではないかと最近は思っている。

 

===演説パート===

というか、そもそも打ち合わせって、対面の会議室ではこれが当たり前ではありませんでしたか?

持ち寄ったアイデア以外にも、会議中に考えたことをその場で発言してよくて、ホワイトボードとかに書いたことがそのまま企画書の原型になっていったり、そのアイデアに関する感想を、時には人の話を遮ってでも、自分の最近の出来事と絡めて喋っちゃって、そこから話が広がったり、そういう割と雑然とした場ではありませんでしたか?

リモートの打ち合わせが増えることによって、一人ひとりのアイデア発表がオフィシャルな感じになって(他の人が口を挟めないため)、なんかスキのない資料をつくり込んでいかないといけない的な、そういう風潮が強まったとは思いませんか?

これは広告会社に限った話ではありませんが、資料に対してフィードバックをしただけで、自分の人格まで否定されている感じがする若者が増えているそうですが、それも持ち寄った案に対する注目度が上がりすぎているからではないでしょうか?

そして、他の人が企画を話しているとき、裏で自分の企画書の完成度を上げる作業をすることになり、まあそれはいいんですが、結果としてあまり話が盛り上がらず、一人ひとりのアイデアがフュージョンできず、最後はCDが「じゃああとはまとめておくから」的な感じで終わっちゃったりしていませんか?

だから対面を増やそう、と言いたいわけではもちろんなく(対面は対面で疲れる)、打ち合わせはアイデアの持ち寄りよりも、その場で生まれるアイデアに意味があるので、そこをもっと生かしてコピーを書いたり企画したり、その場でセッションしちゃってもいいのではないでしょうか?

つまり、「いつコピー考えてるんですか?」という質問に対して「打ち合わせ中」という答えは、むしろかっこいいと、そういう風潮を生み出すことはできませんか?

===演説パート===

 

もちろんこれには弊害もある。

僕はもともとかなりダジャレが好きなので、思いついたことをばんばん書くと、ダジャレの比率が高くなってしまうのだ。

日常で、エビと聞けば「エビデンス」と言いたくなり、あるまじきと言えば「アルマジロ」の横顔が脳をよぎり、アイデア出しが「アイデア出汁」に変換されるダジャレ脳を持った人間が自由に発言すると、チャット欄がダジャレで埋め尽くされ、非常に、非常に、ダサくなる。

わかってるよ。

でもカンヌの受賞作とか見てください。ほとんどダジャレですから。
アイデアが既存と既存の掛け合わせだとすると、それダジャレですから。

最後にちゃんとしたこと書いておくと、ステートメントとか長い思考をまとめるのはやっぱり打ち合わせじゃ無理です。一気に書かないと無限に時間がかかるので、半日くらいまとめた時間を確保して考えたりしてます。

終わり。

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