忘れ草パート3
(前回からの続き)
緊急入院を告げられたのが土曜日の朝4時。
救急病棟から入院病棟の4人部屋に移された頃には
痛み止めを投与してもずっと8だった痛みが0になっていた。
4人部屋だけどたまたま他の人がいなくて
明日いっぱいは1人らしく、それだけは気が楽だった。
朝の回診で内科医がやってきて昨夜より丁寧に説明をしてくれた。
胆管の石は内視鏡で取る以外に方法がない。
内視鏡は内科の領分なので外科が扱えない。
いろいろスタッフを準備した方がいいので月曜に内視鏡を行う。
月曜日の内視鏡までは絶食。
説明が一通り終わった後、ずっと気になっていたことを聞いてみた。
私「先生、今まったく痛みがないのですが」
内科医「うん、痛みが急になくなったってことは、石が出ちゃってるかもね」
私「どういうことですか?」
内科医「胆管から十二指腸に出ちゃって流れたかもってこと」
私「え?じゃあもう大丈夫ってことですか?」
内科医「それを確認するためにも、内視鏡やらないとね!」
私「・・・はい・・」
かくして私の無駄な入院生活がはじまった。
たぶん石がない。
なので痛みがない。
なので痛み止めも打たない。
絶食なので栄養剤を点滴で入れて
じっとベッドに横たわっている。
そんな土曜日を過ごした後、
日曜日には4人部屋が患者で埋まった。
特に会話をしたわけではないが、
医者や看護師との会話から状況が伝わってきた。
患者A:私
患者B:パーマの男、鼻詰まりの手術待ち
患者C:お爺さん、胆管系の何か?
患者D:おじさん、重度の肝硬変。アル中。
患者Bは鼻の手術というもあるのか、
とても元気で看護師さんに軽口を叩いていた。
明日手術を控えているというのに消灯後にポテチを
バリボリ食べはじめてうるさかった。
患者Cはずーっと静かだった
そして、患者Dのおじさん。
日曜の深夜に私が4人部屋の共有トイレのドアを開けると
そこに血だらけのDさんが呻き声を上げながら転がっているではないか。
驚いて立ちすくんでいるとすぐ看護師さんがやってきた。
どうやら尿管の管を自分で抜いてしまったらしい。
次の日。おじさんのところにカウンセラーがやってきた。
カウンセラー「Dさん、あなた昨夜のこと覚えてる?
せん妄っていってね。
アルコール中毒の人がアルコールを断つとなるのよ」
Dさん「もう、やめますよ」
カウンセラー
「一度、中毒になるとなかなかやめられないものなの。
長い戦いになるの。
手伝うにあたってDさんがなんでこんなになるまで飲んでしまうようになったか
それを教えてほしいの。
この場で話してもらうことってできる?」
(え?この場で?ダメでしょ)
Dさん「わかったよ・・・先生」
(いいのかよ!)
Dさん「俺は中野で生まれて・・・」
ここから1時間くらいDさんの生い立ちを聞くことになった。
どうやら都内某所で居酒屋を営んでおられるらしい。
お互い元気になったら、お店に行かせてください。
さて、私のことに話を戻すと
月曜日についに内視鏡検査?手術?を受けることになった。
内視鏡とはいえ全身麻酔下の上で行うので
ちょっと緊張していた。
手術台に乗せられて手際よく器具を挿入される。
自分の周りには手術着を着たたくさんの人。
麻酔科医が「今から麻酔入ますね〜」
と言った5秒後には意識がなくて
気づいたらベッドだった。
その後、内科医が結果を告げにやってきて
内科医「やはり石はなかったです!」
私「はは・・そうですか(わかってた)」
内科医「ですので、手術もなしですかね」
私「え?」
内科医「だって石がないんだから」
なんたる僥倖!!
石が巡り巡って管轄を渡って
ついにフリーダムが・・・
内科医「いちおう外科のほうに確認しますが、よかったですね!」
丸二日、絶食だったので病院食ですら美味いのなんの。
貪るようにパンを齧っていると
外科医がさっきの内科医を連れてやってきた。
外科「手術は予定通りやった方がいいね〜」
私「え?でも石がないから・・・」
外科「あなたはもう石ができやすい胆のうになってるんですよ
だから予定通り取っちゃった方がいいですね」
隣でさっきの内科医がバツの悪そうな顔をしている。
ちくしょう・・・夢見させやがって。
病気の神様から3度目のチャンスをもらった私は
「わかりました、よろしくお願いします・・・」
と答えたのだった。
________________________________________________
ふう。
入院1回目編まで終わりました。。
あと、入院2回目〜手術〜退院編を残すのみ。
需要もなかろうに、もはや自分の備忘録のために書いています。
万が一読んでいる人がいたら、もう少しお付き合いくださいませ。。