リレーコラムについて

変態、変化になる。

丸原孝紀

朝から晩までトロトロになるまでコピーを書きなぐっていた20代の頃。その日も麻布十番のカフェでトロトロしておりました。お供はカモミールティー。ティーバッグの糸の先についている小さな紙をふと見ると、こんな言葉が書かれていました。“Be the change that you wish to see in the world.- Mahatma Gandhi” ガンディー、素敵。偶然私の手元にやってきたその言葉は、それからの人生に大きな影響を与えました。

自らが、変化になる。その後、環境問題から入り、さまざまな社会課題に心砕くようになった私は、WEBマガジン「greenz.jp」のライターとしての活動や、NPOのプロボノをはじめるようになったのです。当初は、大量生産大量消費の片棒をかつぐ広告の仕事でたまった違和感をデトックスしているような爽快感があったのですが、やがて仕事と社会的な活動の深い溝にはまり、苦しさを感じるようになってきました。(greenz.jp https://greenz.jp/author/ecogroove/)

広告をつくってきたため、企業の気持ちはとてもわかる。社会的な活動をしてきたため、NPOの気持ちもよくわかる。コウモリのような存在の自分として、できることはなんだろうかと、悩みました。

ひとつ見えてきたのは、社会課題の解決に取り組むNPOや社会起業家の価値観と、利益をトコトン追求しようとする大企業の価値観が相いれず、それぞれがまるで別の世界にいて、別のゴールを目指しているような状況でした。いまの経済の主流を占める企業の価値観は、そこで得る糧で生活する人や、その製品やサービスを使う人など、社会に大きな影響を及ぼしています。企業とガッツリ向き合う広告会社にいる立場から、企業に少しでも社会変革の風を送り込むことはできないだろうか。

そんな思いではじめたのが、「POZI」というユニットでした。ネーミングの由来はPOSITIVE(ポジティブ)です。ネガティブな状況をひっくり返す前向きなアイデアを生み出すぞ、という意思を込めました。JAMやCRASHのようなパンクバンド然とした爽快感があるとよいなあと思い、POSIと短くし、見た目が締まらないなあと、「S」を「Z」に置き換えてPOZIと落ち着いた次第です。

スローガンは、「ビジネスアイデアを、社会のために」。社会的なことに関心があっても動けずにいるビジネスピープルを仲間にして、いっしょに、社会性のあるビジネスをつくっていきたい。そう願い、活動してきました。

(POZI http://pozi.jp)

2015年に国連サミットでSDGs(持続可能な開発のための2030アジェンダ)が採択されました。ソーシャルセクターと企業、行政が、同じゴールに向けてしくみをつくり、ビジネスに取り組むという指針です。このSDGsが大きな後押しとなって、いまでは社会的な視点をいかに織り込んでいくかがビジネスの持続性を左右するという流れになりつつあります。

広告制作の仕事を100%やった上で、さらに自らPOZIの仕事をつくり、続けていくのはなかなか大変です。提案につぐ提案の日々で、周りからの冷たい視線を感じたり、メンバーがいつの間にか抜けていったりと、なかなか思うようにはいかないものの、先に見えているものはとても明るいと感じています。しつこいことだけが取り柄の私です。バラ色の茨の道を、胸を張って歩いていこうと思います。“be the change”そう、変化そのものなのですから、そもそも、ゴールなんてないですからね。

さて、今週私のコラムにつきあってくださったみなさま、どうもありがとうございました。ひとつ、宣伝をさせてください。

日常だとどうしてもわだかまりを生みがちな政治の話を、カジュアルに語れる場をつくりたいという思いで、ソーセージをつまみながら政治を味わう「Sow!政治」というイベントを2カ月に1回のペースでやっております。次回は5/14(月)。平田オリザさんの「わかりあえないことから──コミュニケーション能力とは何か」を読みながら、価値観が違う相手とどうコミュニケーションを取っていけばいいのかを考えたいと思っています。ご興味のある方はぜひご参加くださいね。
https://www.facebook.com/events/200945210505984/

さて、リレーコラムのバトンを引き継いでくださるのは、私のコピーの師匠、望月和人さんです。サブカル変態野郎だった私を、粘り強い指導でコピーライターとして育て上げてくださった恩人です。会うたびにいつも新しい望月さんのコラム、私も楽しみにしております。

 

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