リレーコラムについて

会社を辞めて初めての朝のこと

井村光明

そして迎えた3月31日最終日、月曜日でした。
定年退職ではないので終業時間に花束や拍手をもらうこともなく、
フリーアドレスなので席の荷物を片付け最後に机を拭いていたら
隣の席のただの同僚と思っていた人が・・・、ということもなにもない。
社員証を返しに会社に行くには行ったのですが、
居場所もないし退職メールを出したばかりで誰かに会うのも気恥ずかしく、
大量の有給休暇にだけ別れを告げ
こそこそと会社を後にしました。

そうなることを見越してか、
「もし最終日の夜に何もなかったら、飲みませんか」
と言ってくれていた方がいました。
ありがたくも初回コラムで書いた帝国ホテルの方です。
今回指定された場所は、四ツ谷駅から徒歩20分ほどの一軒家レストラン。
行くと、サプライズで極々親しくしてくれていた
5人の同僚も集まってくれていました。
そのうち2人はさっき会社の喫煙コーナーでバッタリ会って、
「頑張ってください、僕も頑張ります」なんて素知らぬ顔をしていたヤツ。
とにかくあったかい時間が流れていった

のですが、、、

この後、とても汚い展開となります。
苦手な方はここまでで結構です、一週間ありがとうございました。
下ネタでも良いという方だけお付き合いください。
ちなみにもちろん性的なことではありません。

貸し切りのお店でなごやかに3時間ほど過ぎ
そろそろ日付が変わろうという頃でした。
トイレで用を足して、見ると、鮮血で真っ赤。
下血をしていたのです。
こんなことは初めてで、こんなことを書いていいのか分かりませんが、
一瞬、前の人が流してなかったのかと思った。
でもそんなはずはない。
トイレを出るとプレゼントタイム、からのデザート、からの食後酒と続きました。
嘘だろ、の思いでその間もトイレに行くと、
続けて3回の下血。

こんなに祝ってもらっている中で
リレーコラムにおいてすら「汚い展開になります」と書く必要があることを
誰にも言えるわけはありません。
というか多少お腹がゆるいな程度の自覚しかなく、
特に体調が悪いわけでもないのです。
この1ヶ月の退職のドタバタからやっと開放されお酒も美味しい。
それに、退職するかもと思っていたので、
念のため過去1年間で胃カメラや大腸カメラ、
CTやMRIで脳ドックも一応受けていたのですが異常はなかった。

なのに、何故、今、こんなことになっているのか?

よりによって俺の人生で初めて
退職に伴い明日からしばらく保険証がないというのに。
いや、明日からというか日付変わってもう切れている。

しかも恐ろしいほど偶然なことに、
僕が会社員として納品に関わった最後の仕事は、
この日来てくれていた一人と一緒に担当させてもらった
「マイナ保険証」のテレビCM。
僕は保険証に詳しくなっていました。
会社員生活は34年もあったのに、なぜこのタイミングなのか・・・。
「(貸し切りだから)お時間は大丈夫ですよ」
とお店の人が言ってくださる中で、
大丈夫じゃないです!
ついさっき保険証が切れましたし、
ついさっきまで有給が60日もあったというのに悔しくてたまりません!
と心の中で叫んでいました。

翌4月1日、会社を辞めて僕が最初に出した声は
朝イチの病院で、
「実は昨日で会社を退職しまして、
 今日から保険証がないのですが・・・」
となったのでした。

ちなみにその後大腸カメラで精密検査をすると、
「悪いものもポリープも痔も見えませんでした。
 鮮血だったとのことなので、
 退職のタイミングだったとのことですし、
 ストレスで一時的に出口に近いところが切れたんですかねぇ。
 心配はないですよ」とお医者さん。

就活の時の方がよっぽどストレスだったのに、
退職の時は腸が切れるのか。
まぁ新しいことを始めると新しいことが起こるということのようです。

というわけで、元気にフリーを始めています。
ようやくかわいい名刺もできました。
初回コラムにも書きましたが僕と同じく
「今まで同様にCMを作るだけなら、
 せめて新しい人とでも出会わないことには」
と思っている方がいらっしゃいましたらぜひご連絡ください。
imura@chime16.jp
一週間お付き合いいただきありがとうございました。

さて来週は博報堂の内山奈月さんです。
同じ会社でしたが仕事をしたこともなく
喋ったこともほとんどなかったのですが、
退職後にバッタリ会った時
「退職メール読みました」と感想をくれたと思ったら、
次にバッタリ会った時にも
「この前言い忘れたんですけど」と、
僕がTCCイベント用に書いた「広告は雑草」という短文を
読んでくれていたんです。
会場にひっそり貼られてたあんなのを
読んでくれていた人いたんだ〜、とビックリ。
これも新しい人との出会いかなとお願いしたらご快諾くださいました。

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