その点コピーライターは
前走者の入江さんから
バトンが回ってきた時に思ったことは
「うわ、来ちゃった」
だった。
なにせこちとら
ごくごく平凡な家庭に生まれ、
平凡な幼少期を過ごし、
大きな挫折も成功体験も
特に経験せず今に至り、
熱く語れる趣味も主義も
面白エピソードもない人間。
コラムでわざわざ書きたいことなんて、
んなもん無いのである。
普段仕事をしている中でも、
なんか作りたいものとか
表現したいことはないの?
と聞かれることが、しばしばある。
だがそれにも
特にないです、と答えるしかない。
そんな内なる表現衝動があったら、
物書きとかアーティストとか
然るべき職業を目指していただろう。
で、ここからが本題なのだが、
その点コピーライターは、いいですよね。
というお話。
なんつったって書くべきお題がある。
商品とかサービスとか、
表現のきっかけがいくらでももらえる。
そして
別に立派なことを言う必要もない。
むしろ世の中の多くの人に
メッセージする仕事だから、
多くの人が共感できる
ふつうの感性が歓迎される。
このことで思い出すのは
糸井さんの
TCCホール・オブ・フェイムのスピーチだ。
言うまでもなく糸井さんは
類稀なる才能をお持ちの方なのだが、
その糸井さんが語る「ふつうの人」の話は
何度読んでも痺れてしまう。
勇気がもらえる。
糸井さんでさらに思い出したけど、
NCAAのコピーも大好き。
特にボディコピーの最後、
がんばれなかった人についても、
からの二文。
がんば「れ」なかった人を描くのが
コピーなのか!!と、
なんてやさしい視点なんだ!!と、
初めて読んだ当時、衝撃を受けた。
岡本欣也さんのJTの広告もそう。
席をゆずらなかった。
言い訳ばかり考えていた。
を見た時も、
ゆずらなかった人の実感!!と打ち震えた。
しかもちゃんと、
あなたが気づけばマナーは変わる。
という希望で結ばれている。
以前何かで、落語には
忠臣蔵の討ち入りを勇ましく描くのでなく、
途中で逃げた人とか
最初から参加する気がなかった人のことを
描いたものがある、と聞いた。
落語とは、人間の業の肯定である。
という話も聞いたことがある。
(落語に詳しいわけでは全然ありません)
それを知った時、
コピーも一緒だと思った。
ふつうの人以上に、
ふつうのことを考える
ふつうが飯の種になる仕事。
立派なこととか、正しいことを
大声で言うのではなく、
弱さとか狡さとかかっこ悪さとか、
人間臭さにそっと寄り添って、
それすら肯定してあげる仕事。
自分もやっておいてなんだが
なんてかっこいい仕事なのだろう。
しかも毎回、お題がもらえる。
まじでこの職に辿り着けて
よかったな〜〜〜!
書きたいことがないと言いつつ
長々と駄文を書いてしまいました。
拙いコラムに1週間お付き合いいただき
ありがとうございました。
次は、今年新人賞を受賞された
大広WEDOの市川さんにバトンを回します。
市川さんは東京転勤の際に
お世話になった先輩。
僕が名古屋に戻ることを決めた時、
美味しいクスクスをご馳走してくれた
優しい方です。
しかも前走者の入江さんと僕と市川さんは
2016年の宣伝会議賞で受賞した同期。
こうして今バトンをつなげることに
ふしぎな縁を感じます。
それでは市川さん、
よろしくお願いします!!
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