リレーコラムについて

忘れられない配達

高階壮秀

大学生のとき、
アルバイトは、
UberEatsの配達員だった。

緑色のリュックを担いで、バイクにまたがる。
街中でよく見る、あの配達員の一人だった。

ある夏の日。
1つの注文が入った。

ラーメン屋さんから、
とあるマンションへの配達。

やはり、
暑い日や雨の日は、
注文が増えがちである。

みんなが外出したくない日は、
配達員にとっては稼ぎ時なのだ。

ラーメン屋さんで、
大盛りのラーメンを受けとり、
緑色のリュックに詰め込む。

バイクのエンジンをかけ、
目的地のマンションへの向かった。

・
・
・
UberEatsの配達員をしていて
注意すべきことは、2つある。

1つ目は、料理を崩さないことだ。

お店の人に作り直してもらうことになるし、
注文した人を待たせてしまう。

料理を傾けたりするのは厳禁。
道中の急カーブは、要注意である。

今回のラーメンだと、
スープが、こぼれてしまうわけだ。

ちなみに、
最も崩れやすい料理は、お寿司である。

ネタとシャリは、
かんたんに分離してしまう。

UberEatsの配達員をしていて
もう1つ注意すべきことは、
交通違反である。

僕は違反したことはないが、
スピード違反、一時不停止、駐輪禁止。

そういったもので、
罰金になると、もちろん自腹。

1日のバイト代は、簡単に弾き飛ぶ。

働いたのに、赤字。
考えるだけで涙が出てしまう。

・
・
・
バランスと交通ルールに注意しながら、
無事、目的地であるマンションへと辿り着いた。

大きめのマンション。
配達先は、18階だった。

エレベーターに乗ろうとした瞬間、、、

「工事のため停止中」

そんな貼り紙が、
エレベーターの扉に貼ってあった。

絶望のあまり、
倒れてしまいそうになったが、
グッと堪えた。

そんなことをしたら、
スープが、こぼれてしまうから。

アルバイトとはいえ、仕事である以上、
なんとしてもラーメンを、届けなければならない。

僕はエレベーターではなく、
階段で、18階を目指すことにした。

夏のお昼時。
階段は、クーラーなんて効いていない。
灼熱である。

それでも、
僕は、一段一段、歩を進めた。

これを読んでくれるあなたは、
きっと、18階まで階段で向かったことはないだろう。

それも、そのはず。

建築基準法は、
31m以上の建物には
エレベーターの設置を義務付けており、

基本的に7階以上の建物には、
エレベーターが設置されているらしい。

18階は、エレベーターで向かうべき場所なのである。

もしあなたが、
18階まで階段で向かった経験があったしても、
そのとき、ラーメンを運んではいなかっただろう。

ラーメンを運ぶ×階段を登る
この二刀流は、きっと僕だけだ。
・
・
・
やっとの思いで、18階に到着した。
それは、配達というより、登頂だった。

やったー!と、
バンザイしたい気持ちを、
グッと堪えた。

両手を上げたら、
スープが、こぼれてしまうから。

部屋の前に到着し、ピンポンを押す。

「ありがとうございます!」
さわやかなお兄さんが、
ドアの隙間からひょっこり出てきた。

僕は、すかさず一応謝る。
(僕のせいじゃないけど)

「す、すいません。お待たせしました。
 エレベーター止まっちゃってて……」

すると、
さわやかお兄さんが、
「え?? 1つ以外は、動いてませんでしたか?」と、
エレベーターの方を指差した。

エレベーターは3台あり、
止まっているのは1台だけだった。

僕のせいだった。

NO
年月日
名前
6211 2026.11.06 原智史 博報堂
6210 2026.11.05 原智史 コピーライターという仕事
6208 2026.11.04 原智史 コラムってなんなのさ
6207 2026.11.02 原智史 シンギュラリティの思い出
6206 2026.10.30 田村友洋 性格診断
  • 年  月から   年  月まで