リレーコラムについて

実力FX

廣瀬大

ある日のこと、クリエーティブ局の若手の方々と夕食を囲む機会があって、

(僕が話を振ったわけではまったくないのだけれど)

将来どんな風になりたいか、若者が話してくれたことがあった。

「○○さん、みたいになりたいです」

とその人は社外の具体的な方の名前を挙げた。

「そうなんですか。○○さん、最近お名前をよく聞きますよね。

僕はあまり存じ上げないのですが、なにをつくった方なんですか?」

「えっと、なにをつくったかは僕もあんまり知らないです」

「え、そうなんですか」

「SNSでたくさん情報を発信されていて若手から絶大な人気です」

「なるほど〜」

「本も出されています」

「本ですか。すごいですね。おもしろかったですか?」

「いや、僕もまだ読んではいないです」

 

ふ〜ん、そうなんだ。

具体的にどんな仕事をしたとか、

どんなCMを企画した、どんなコピーを書いたというより、

情報の発信量(もちろん発信の質も)がものを言うのだなと

発見があった夕食会だった。

確かに、名前をよく見かけることで認知されるし、

その人の発言に多く触れることで信頼度も上がっていく。

昔からあったことだけど、近年、それが顕著になってきている。

 

「実力FX」という僕が勝手に提唱している言葉ある。

自分の実力に対して、レバレッジをかけ、

より大きくする、もしくは大きく見せること。

SNSでの発信、テレビ出演、講演など手段は多々あり、

1の力を100、1000にすることも可能。

 

いささか、皮肉めいたネーミングだけど、

要はちゃんと自分をブランディングして、

情報を発信していかなければならなくなってきているということだ。

 

仕事の成果=自分の実力×環境×仲間

 

だと思うから、自分の実力をつけることはもちろん、

可能であれば、自分の実力を大きく見せて、

環境や仲間に恵まれるような状況をつくっていきたい。

と考えるのは自然なことだろう。

それによって成果も大きくなる。

環境や仲間に恵まれることによって、実力も自然と上がっていく

(もちろん上がらないことも多々あると思うけど)。

 

そんなわけで、僕も「実力FX」に勤しもうと思う。

SNSなどで情報を発信し、若者に絶大な人気を得られたらと考える。

でも、全然、進まない。

そうか、「実力FX」にも当たり前だけど、

センスや努力が必要なのだ、

向き不向きがあるのだと改めて気づく!

 

「実力FX」ってすごい能力のひとつなんだなと、

ある種の才能なんだなと思う。

そんな才能、まったくない。

どうやら自分の実力を地道にコツコツ上げていくことしか、

僕にはできなさそうだ。

 

 

 

次週、僕からのバトンを受けてくださるのは、

今年、JAAA懸賞論文で金賞を受賞された福永琢磨さん。

環境問題や教育などに取り組む熱いコピーライターがどんなコラムを

書いてくださるのか、楽しみです。

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