坂口先生
高校時代の恩師です。
ぜったいに足を向けて寝られません。
と言いきりたいところなのですが、
どの方角にいらっしゃるのか把握できておらず、
足を向けて寝てたことけっこうあると思います。
すみません。
ぼく高校受験に大失敗してまして。
地元ではまずまずの名門だった付属の中学から、
すってんころりん転げ落ち、
かなり気合の入った男子校の高校に進学しました。
その落差たるや、エンジェルフォール。
というか、詰んでるフォール。
終わった・・・。
人生で初めて経験する大きな挫折に、
だいぶ滅入っておりました。
ただ。
この男子校での3年間が、
逃げ癖のあるぼくの
腐った根性を叩き直してくれて。
その後のぼくの人生を、
大きく大きく変えてくれました。
もちろん、ものすごく良い方向に。
坂口先生は、友だちのオカン
的な雰囲気のある生物の先生でした。
担任ではなかったんですが、
放課後、職員室に行くと、
時間をかけてじっくりコトコト、
ぼくの話をとにかくよく聞いてくれたんです。
ぼく「もうやめるわ学校。どうせがんばってもムダじゃけん。」
先生「やめてどうするん?」
ぼく「鳶職でもやろかな・・・」
先生「わかった。じゃぁ、ちょっと時間ちょうだい。
知り合いの鳶職の親方に連絡するけん。
で、1ヶ月働いてこられ。学校休んでええけぇ。
1ヶ月働いてみて、それでも鳶職になりたい
って言うなら全力で応援する。
ただ。もし、鳶職をあまくみとったり、
逃げ道に考えとるんやったら、許さんよ。
鳶職をバカにすんな。」
って、本気で怒られたり。
ぼく「学校やめて芸人になろかな。」
先生「これからのお客さんって、どんな人たちやと思う?」
ぼく「どんなって?」
先生「たぶん、ほとんど大卒になるじゃろうなぁ。
キャンパスライフあるあるとか、大学生あるあるとか。
お客さんと同じ経験しとった方が、
笑いの幅がひろがってええんじゃねぇん?」
って、大学進学をすすめられたり。
足を向けて寝られない、
とは言いきれませんが、
坂口先生との出会いがなかったら、
続けることだけが取り柄のいまのぼくはいない、
とは言いきれます。
続けてさえいたら、
挫折だってチャンスに変えられるんだよ。
そう教えてもらった気がしています。
卒業式の日。
先生は、ぼくの母にこう言ったそうです。
「お母さん、大丈夫!この子はもう、大丈夫ですよ!」
この高校にいけて、本当によかった。
じつは、高校を卒業してから、
まだ一度も坂口先生に会っていません。
そして、これからも会えることはありません。
うれしい報告ができる時がきたら、
お礼を言いにいこうと決めていました。
で、8年前。
結婚の報告をしようと思って連絡したら、
すでに他界されていました。
やっぱり、会えるときに、
ちゃんと会い直すって、大切ですよね。
このコラムって、天国からも読めるんですかね。
先生のおかけで、ぼくコピーライターになれたよ。
粘り強く続けたおかげで、新人賞までもらえたよ。
これからも粘り強く、続けることだけ、続けます。
坂口先生に、届くといいな。
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