リレーコラムについて

偶然

淺井勇樹

自分は、どれくらい自分の思考や行動をコントロールできるのだろう。今日やるべきことを決め、目の前にある一日に期待し、自分の思った通りの楽しいことが起こる。ほら見たことか。自分が思い描いた通りに事が運んだぞ。いやいやそんな日はほとんどない。大体、必ず、どこかで計画が狂う。そこで考えてみる。計画が狂ったのは自分が失敗したからではなく、自分の身の回りにあるすべてのことが、そもそも偶然で出来ているからなのではないか。なぜ今日の朝ごはんはパンにしたのか。なぜ今日はバスではなく電車に乗ったのか。なぜその人を好きになったのか。自分の意思で決めていると思っているいろんなことも、明確な説明を求められると意外と答えられない。行き着く説明は「なんとなくそうなった」になってしまう。自分でコントロールできないことは気持ちが悪い。不安になる。でも見方を変えると尊い。偶然は、人間の無力さだと嘆くこともできるが、それを受け入れることができる人間の懐の深さとも言えるからだ。偶然と言えば、古代アテネでは、議員は「くじ引き」で選ばれていたという。社会が偶然を認め、偶然を本気で許容していたのだろう。私のような者が、ここで勝手に何かを書いているという偶然。これもひとつ、尊いと思って許してほしい。

淺井勇樹の過去のコラム一覧

5309 2022.05.27 信頼
5308 2022.05.26 エビ中
5307 2022.05.25 勝敗
5306 2022.05.24 偶然
5305 2022.05.23 言外
NO
年月日
名前
5772 2024.10.04 高崎卓馬 名前のない感情
5771 2024.10.03 高崎卓馬 母のひとりごと
5770 2024.10.02 高崎卓馬 批評と愛
5769 2024.10.01 高崎卓馬 再会の夜
5768 2024.09.30 高崎卓馬 ともだちの木
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