リレーコラムについて

エレクトリカルパレード

辻中輝

とある小学校の授業参観。

古典の先生が生徒たちに質問する。

「昔の人は、男の人のことを、おのこと言いました。

では女の人のことは、なんて言ったでしょうか。

わかる人?」

「はいはいはーい!!」

女の子が元気よく手をあげる。

「はい、白川さん。」

その子は大声でこう言った。

「おめこ!!」

凍りつく教室。

その女の子の名前は、白川尚子。

僕の母である。

この話はお正月に祖母から聞いた。

人生ではじめて顔から火が出たらしい。

 

(ここまで読んで引いてしまった方は、

 そっとこのコラムを閉じてください。

 以下、下ネタが続きます。)

 

そんな母との最初の思い出は、

水性ペンでおちんちんに描いてもらったゾウさんの絵だ。

かなりリアルな、ゾウさんだったと思う。

(母は芸大出身である。)

そのゾウさんの絵を、

おふろできれいに洗い流すのが僕の日課だった。

 

またある日、

洗面台で歯を磨いていると、

母がお風呂から出てきて、

僕の頭の上におっぱいを乗せる。

(母はGカップである。)

そして、こう言う。

「ミッキーマウス!」

その時は、僕は歯を磨きながら、

エレクトリカルパレードを歌わないといけなかった。

 

タンタラタンタン~♪

タンタラタラタラ~♪

 

おっぱいを頭に乗せ、

踊りながら寝室まで行進する。

ある日、パレードの最中に父が仕事から帰ってきて、

小さい声で「やめなさい。」と怒られた。

 

母はいつも自由で前向きだった。

 

幼稚園の時、

寝るのが遅いと、

母はピアノを弾きながら

「はやく寝なさいの歌」を歌う。

その歌が終わるまでに、

布団に入らないと本気で怒られた。

 

小学生の時、

少しでも熱があると

「休めるやん。ラッキー。」

と言い、薬を飲んでお昼まで寝たあと、

いっしょに絵を描いた。

 

朝、なんど起こしても起きない僕。

そのほっぺたの上に母はベーコンを乗せた。

「これはなんでしょう。」

「・・・ん?ベーコン?」

「正解。」

という謎の会話をしながら、

僕は目を覚ました。

 

そして、中学の時。

僕は母のことを嫌いになった。

 

特に受験前はイライラした。

色々なことで悩んでいる中、

自由で前向きな母がとても鬱陶しかった。

「話しかけんな。」

「部屋に入ってくんな。」

そして、絶対言ってはいけない一言も

一度だけ言ってしまった。

でも、母は強かった。

「はい、私は今日から透明人間です。話しかけないでください。」

そう言って、

受験勉強をする僕の後ろで静かに踊りはじめた。

「・・・・なにしてん。」

「応援の舞。」

ちょっと笑ってしまったけど、

やっぱり鬱陶しかった。

 

そして、高校の時。

「いじめられてるかも。」

と恐る恐る母に言うと、

母は少し泣いた後、

「でもよかったわ。いじめる側じゃなくて。」

と言ってくれた。

「まぁ、家おっても暇やろし、

ちゃちゃっと授業受けて帰ってき。」

そう言いながら、次の日も明るく見送ってくれた。

食欲が出ない日も、弁当はいつも大盛りだった。

 

大学受験で、

第一志望の大学に落ちた時も母は笑った。

「あんなに頑張ってたのに落ちるなんて、

もうその大学行かん方がええってことやわ。」

そう言って後期試験の課題であるデッサンを

毎日教えてくれた。

 

そして、大学から滋賀での一人暮らしがはじまり、

そこから就職で東京に行き、今にいたる。

 

今、思い返せば、

母はコミュニケーションの天才だった。

そもそも、母とはそういうものなのかもしれない。

 

ゾウさんも、ミッキーマウスも、はやく寝なさいの歌も、

いっしょに描いた絵も、ほっぺの上のベーコンも、

応援の舞も、大盛りの弁当も、デッサンも。

いつも僕を、明るい方向に導いてくれた。

 

自分も、いつかそういう人になりたい。

 

打ち合わせで煮詰まっている時、

自由な発想で突破できたらいいのにと思う。

 

自分の担当したクライアントが

落ち込んでいる時、

前向きになれる企画を

提案できたらいいのにと思う。

 

自分の書いた言葉で、

世の中をもっと明るい方向に

導けたらいいのにと思う。

 

広告代理店に入って7年。

まだまだ、できないことばかりだけど。

前向きに、自由に、がんばっていこう。

エレクトリカルパレードでも歌いながら。

 

タンタラタンタン~♪

タンタラタラタラ~♪

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

最後のコラムです。

母のことを書きました。

 

思い出すのにも時間がかかったのですが、

恥ずかしくなって途中で消したりしていたら、

書くのにも、かなり時間がかかってしまいました。

 

もう書き残したことは、何もないです。

5日間、コラムを読んで頂きありがとうございました。

 

来週からは、新人賞同期で、同じ第2CRプランニング局の

先輩でもある福岡郷介さんにバトンをお渡しします。

 

「企画の向こう側」で、タケシの話ばかりしてしまいましたが、

郷介さんも、新人の頃から色々とお世話になった大好きな先輩です。

郷介さん、よろしくお願いいたします。

NO
年月日
名前
4741 2019.10.19 尾崎敬久 人間くさくていいんじゃない?人間だもの。
4740 2019.10.18 尾崎敬久 1分先は闇
4739 2019.10.17 尾崎敬久 だって筆箱のことをペンケースって言うから。
4738 2019.10.16 尾崎敬久 真夜中のパノラマ
4737 2019.10.11 大塚久雄 「ひと言」にひと言⑤
  • 年  月から   年  月まで