リレーコラムについて

もうひとつのクリエイティブ

こやま淳子

毎朝30分くらいでさらさらっと書いて
終わらせようと思っていたこのリレーコラムですが、
なかなかさらさらっとは書けないものですね。

めんどうなので(おい)もう少し軽い内容にしようかなとも思うのですが、

最近お会いする人に、
「カンヌどうだった?」
と聞かれることが多く、
そのたびに「あー良かったです」「刺激になりました」
くらいしか言えない自分がいて、

なぜなら、ちゃんと話すと、
こんな感じで長くなってしまうからです。笑

というわけで、今日も「カンヌがどうよかったか?」
について、言語化してみようと思います。

22年前と比べると、部門が増えて複雑になったようにも思えるのですが、
実はわかりやすいイベントになったなという気もしました。

昔は、フィルムやプリントを見て、
わからない英語を何度も見返し、
「こういう意味かな?」ということを自分で考えないといけなかったのですが、
いまは、ほとんどの作品にペライチのプレゼンシートや解説動画のようなものがついていて、
それを解読すると、このブランドにはどんな課題があり、
どんなアイデアでどう人々を動かしたか、ということがシンプルにまとめられているのです。

もちろん英語で書かれているのですが、そこは文明の目覚ましい発達もあって、
Google翻訳というアプリをかざすだけで、パッと文章が読めてしまう。

私はあのプレゼンシートを読むのが好きでした。
普段も「カンブリア宮殿」とか「プロフェッショナル仕事の流儀」
のようなお仕事番組を見るのが好きなのですが、
ああいうドキュメンタリーを見るのと似たようなおもしろさがそこにはありました。

そして22年前のカンヌは「表現の見本市」という感じでしたが、
いまのカンヌは同時に「プレゼンの見本市」でもあるなと思いました。

今回、日本マクドナルドの「No Smiles:あなたらしい笑顔で働こう」が
インフルエンサー部門のゴールド他、さまざまな賞を受賞していました。
それを手がけたTBWA \hakuhodoの細田さんと現地でお話できたのですが、
プレゼンビデオの構成は、
TBWAの海外のスタッフから色々とアドバイスを受けたとおっしゃっていました。

その内容については、
細田さんがご自身で語ったりすると思うのでここでは割愛しますが、
「海外のスタッフにアドバイスを受けた」というのも
良かったんだろうなあと私は思いました。
日本人はもしかしたら世界的に比較するとプレゼンが少し苦手だし、
「外から見た日本」について、よくわかっていないからです。

フィルム部門のグランプリ他数々の賞を受賞した
「WOMAN’S FOOTBALL」という企画は、
女子サッカーの動きをVFXで男性に変え、
先にその男性偽装版のムービーを流した後に
「実はあれは女性のプレイでした。女子サッカーも意外とすごいでしょ?」
という種明かしをするというおもしろい施策なのですが、
そのプレゼンビデオも非常によくできていました。
なんというか、プレゼン自体がエンターテイメントになっているのです。

それがどんなキャンペーンだったか、
どんなデータ上の効果をもたらしたか、
人々にどんなインパクトを与えたかということが、
リズミカルな編集、エキサイティングな音楽とともに描かれていくのですが、
途中、そのビデオを視聴しながら
思わず「ふふふっ」と笑ってしまう黒人女性のインサートが入る。

彼女はビデオの最後にも再び登場し、
「この動画は伝えてるー女性は男性と同じようにプレイできることを。
いいえ、それ以上にできるかもしれないってことをね」
という言葉を語り、ビデオは終わります。

この女性の語りは、演技なのかリアルなのかよくわからないのですが、
そして意味的には入れなくても成立する部分だったりもするのですが、
エモーショナルな読後感を残す絶大な効果がある。

少なくとも私は、この最後の一言で、
サッカーとかそういうものを超えた『全女性へのエール』みたいなものを感じ、

「うわああああ。かっこいいー!!」

と授賞式会場で叫んでしまいました。

ああいうプレゼンビデオは自分でカンヌ出品した経験がないので、
どの職種の人がつくるのかよく知らないのですが、
日々ブランドの良いところを表現するステートメントやコピーを作っている
私たちコピーライターにとって、
すごくおもしろい「もうひとつのクリエイティブ」だなあと思いました。

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