リレーコラムについて

ほんとうにあった怖い話/神社

福宿桃香

その日、私は東京大神宮にいた。
神前式を初めて執り行った神社としても知られる由緒正しき縁結びの名所を
なぜ私が訪れたのかといえば、それは、私が恋愛に悩んでいたからに他ならない。

その日から遡ることちょうど半年前、私は好きな人にフラれてしまった。
相手からフラれるという経験が初めてだったからなのか、
それとも彼のことがとても好きだったからなのか、
おそらく後者だと思うが、私は信じられないほど落ち込んだ。

仕事どころか、ごはんを食べたり眠ったりという当たり前のこともままならない。
他のだれかに目を向けようとしても、
彼以外は全員ジャガイモだと思って過ごしてきたために
世界が突然ジャガイモと自分だけになってしまい、希望を見出せなかった。
ついには、もっと私がかわいければ違う結果になったのではないかと整形について日々調べ、
湘南美容クリニックのバナーに追いかけられている始末だ。

そんなひどい状態が半年経っても改善されなかったため、
とうとう神様の力を借りることにしたのである。

 

手水舎で手と口を清め、鳥居をくぐる。
地続きのはずなのに、空気が変わったように感じた。これがパワースポットか。
お賽銭を投げ入れ手を合わせる。

頭の中には様々なことが走馬灯のように浮かんだが、
私が神様なら強欲な女より健気な女を支援するだろうと思い
(幸せになりたいです。見守ってください)
と一言だけ祈って、次の人に場を譲った。

せっかくなのでおみくじも引いていこうと隣の社務所へ立ち寄ると、
かわいい女子大生4人のグループが楽しそうにおみくじを選んでいる。
会話に耳をすませると「恋みくじが特に当たる」とのことだったので、
私も恋みくじを一枚購入した。

深呼吸をして、一気に開く。

 

「吉  恨んではいけません 諦めなさい」

 

そんなことがあるだろうか。
これ以上ショックなことが、あるだろうか。
はるばる電車を乗り継ぎ遠くの神社まで来て、諦めなさいと書かれた恋みくじを引いた。
私は何をしているのだろう。本当にむなしかった。

 

「待ってやばい大吉なんだけど!」
「待って待って私も!」
「ねえ!私も!wwww」
「私もーーーーwww やばwwwwwww」

 

これ以上ショックなことは、すぐあった。
先ほどの女子大生グループが同じ恋みくじで大吉を引き当てたのだ。しかも全員だ。

 

「こんな偶然ある?wwすごいんだけどwww」
「え、記念に自撮りしよwwww」

 

さらに、彼女たちは突然自撮りを始めた。

涙をこらえる孤独な社会人の写り込みは心霊写真より恐ろしいので、
慌ててしゃがんで身を低くし、おみくじを木に結ぶ。

私がしゃがんだことにより、勝者VS敗者の構図は一層際立った。
一部始終を見ている巫女さんは、今どんな気持ちでいるのだろう。
こういう時に限っておみくじもうまく結べないもので、
敗者がもたついている間に、
写りに満足した女子大生たちは嵐のように去っていった。

 

角材で殴られたかのようなショック療法が功を奏し、
私はその後、どん底から立ち直り、整形も思いとどまった。

しかしカウンセリングまでは済んでしまっていたため、
「目の下の影クマがひどく、特に左側のクマが顕著」という
容姿のマイナスポイントを突きつける診断書だけが
永遠に手元に残る形となったのである。

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3日目は、東京大神宮での怖い話でした。
コラムに書けるぐらい元気になってよかったです。
最近おみくじを引いたときは大吉でした。

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