2025年度のTCC賞授賞式レポートPart 1 新人賞・TCC賞

2025年12月18日、恵比寿のウエスティンホテル東京にて
2025年度、TCC賞授賞式およびホールオブフェイム顕彰、
サーティース会員へのお祝い、そして
「TCCコピー年鑑2025」発刊記念パーティーが開催されました。
2025年度は、TCCグランプリ 1作品、TCC賞 13作品、
最高新人賞1人、新人賞18人、審査委員長賞2作品が選ばれました。
会場には受賞者を含め、300人を超える人が集まり、大盛況でした。
授賞式の始まりです

授賞式の司会は、TCC会員の福宿桃香さんと嶋野裕介さん。
最初にTCC賞についての説明がありました。
なんと今年で63回を迎える広告賞です。
谷山雅計TCC会長から挨拶

まず、先日とある広告イベントで行われた
「AIが作ったコピー vs 人間が書いたコピー、どちらがいいか」という催しで
審査員をした時のことを振り返り、結果的には人間が勝利したけれど、
AIもかなり上手かったと前置きし、挨拶しました。
私はこの状況というのは、我々TCCというクラブにとっては、
自らの存在意義をきちんと示せるチャンスではないかと思っています。
というのは、僕今日ここいらっしゃっている受賞者の皆様、
その方々は皆さん明らかにAIに勝っていると思うからで。
すでに仕事にAIを活用している方も「人間の知恵」で
ちゃんとAIを乗りこなして、よい選択をして上手に活用して、
だから結果として勝っているということだと思うんですね。
ここにいらっしゃっているクライアントの皆様、広告会社の皆様。
「これからのこの仕事は、そこそこのコピーとそこそこのアイデアが
あればそれでいいよ」と思われるようでしたら、もうさっさとAIを
使ってやっちゃった方がいいと思うんですけど、
やっぱり「これはそこそこではダメだ」
「もっと突き抜けた上のレベルのハードルを超えていきたい」と
思える仕事があったら、ぜひTCCのプランナーやコピーライターに
発注していただけるといいと思います。
とはいえ、近い将来AIが新人賞を取って会員になったり、
グランプリの最終決戦が、「人間の仕事 vs AIの仕事」になるかも
しれません。そういう未来が来た時に振り返ったら、
「ちょうど2025年ぐらいが過渡期だったよね」と言われるかも
しれないと思ったりします。
これから授賞式で皆様にご紹介する全ての仕事は、
今現在において最新の素晴らしい仕事を、TCCの選考眼で選んだ、
本当にハイレベルなクリエイティブが揃っていると自負しております。
じっくりご鑑賞し、受賞者に盛大な拍手を送っていただけると
ありがたいです。
栗田審査委員長の審査講評、TCC賞について語ります。

今年、TCC賞は久しぶりに応募数がすごく増えたんですね。
1割弱くらい増えました。
時代の流れ的に、グラフィックなどは少しずつ減っていますし、
総数というのは徐々に徐々に右肩下がりだったんですけれども、
今年なぜかグッと上がりました。
先ほど谷山会長から「AI時代」というお話もありましたが、
AIやデジタル化を含め、効率化され、効果測定もできるようなってきている。
そうした数値化しやすい広告にすごく注目が集まる中で、
TCC賞というのは「表現のおもしろさ」。
なかなか数値化しにくい、表現のおもしろさが集まり競う場だと思うんです。
そこに改めて注目が集まった、応募してくださったというのは、
とてもおもしろい、いい現象だなと思いました。
というのも、TCC賞というのは、本当に「表現のおもしろさ」という一点に、
ほぼ集中して審査される賞です。
広告賞によくありがちな「リザルトはどうだったか」「効率がどうだったか」と
いったことはほとんど考慮されず、「心の中でグッときたかどうか」という
一点をすごく重視して審査される賞です。
そこがすごく面白いところだなと思っています。
最近、グラフィックデザイナーの佐藤晃一さんの文章を読みました。
野に咲く花には、すごく色とりどりの、いろんな美しい花がある。
何のために美しいかというと、虫を集めるためである。
虫や蝶、鳥たちを集めるための「機能」として美しく進化している。
ただ、それを目的とするにしては「美しすぎる」と。
目的を達成するという以上の「何か」が
そこにあるんじゃないだろうか、という内容でした。
僕、広告も、もしかしたら同じかなというふうに思っています。
「認知を獲得する」とか「売り上げを上げる」という、
そのために広告は作られるんですけれども、それ以上の「何か」がやっぱりあって。
その「美しさ」のようなものを追い求めるということをやっていて、
その「粋(すい)」のようなものが、このTCCに集まっているんじゃないかな、
と僕は思っています。
その美しさとは何かということを、すごくみんなが考えている。
今年の受賞作を見ましても、やはりいろんな意味での「効果」を超えた
「何か」を獲得しようとした作品ばかりで、
色とりどりの花ばかりだなというふうに思っています。
新人賞もすごく今年は元気で、とてもいいものがたくさんありました。
グランプリの「決めつけ刑事(デカ)」は、
SNSの誹謗中傷を防ぐ目的でつくられたものですが、
それ以上の「おかしみ」や「素晴らしさ」を獲得しています。
会場にも作品がありますので、
今年たくさん集まった「花」をご覧になってください。
受賞者の皆様、関係者の皆様、本日は本当におめでとうございました。
新人賞の表彰です。

今年度の新人賞は339名の応募者から18名が受賞されました。
TCC副会長の磯島拓矢と細川美和子がプレゼンターを務め、
受賞者にトロフィを手渡しました。

岩崎裕介さん

岩本光博さん

佐藤充さん

松村紘世さん

棚橋直生さん

齋藤大樹さん

和泉能成さん

佐藤潤一郎さん

平田航聖さん

市川雅一さん

永田優太朗さん

市川晴華さん

瓜谷優紀子さん

窪田倫明さん

高階壮秀さん

原田真由さん

船引悠平さん

村橋満さん
最高新人賞 受賞の言葉:平田 純一さん

この度は、最高新人賞をいただき、本当にありがとうございます。
僕は大学を卒業してからずっと九州で、15年ほどコピーライター、
CMプランナーとしてやってきたんですけれども、「予算の制約」が結構ありました。
制作費が少ないというだけであれば、企画で突破できるところはあるんですけれども、
流す媒体があまりない、といったこともありました。
だからこそというか、僕の中で持っていた「信念」があります。
「少ない接触の中でも、しっかりと記憶に残るクリエイティブを作る」ということです。
今回の『決めつけ刑事』の企画も、その延長線上、その信念で出した企画で、
このような賞をいただきました。
いろいろな方に反響をいただいて、このような賞もいただけたということは、
自分が信じてやってきたことが結果につながったと、自信を持てるようになりました。
今後とも九州から、東京、全国に届くようなクリエイティブを作っていきたいと思いますので、
よろしくお願いいたします。この度はありがとうございました。
TCC最高新人賞 ACジャパン2024年度 決めつけ刑事
審査委員長賞の表彰です。
その年の審査委員長がご自身の目線や基準で選出する賞です。
審査委員長の栗田さんから久山弘史さん、米田達也さんに
トロフィが渡されました。

久山弘史さん

米田達也さん
TCC賞の表彰です。

本年度のTCC賞は、 4000を超える応募作品がありました。
その中から勝ち抜いた13の仕事が受賞しています。
トロフィのプレゼンターは副審査委員長の、井村光明、国井美果です。
(麻生哲朗さん・多田琢さんは当日欠席でした)
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小西慶さん、辻健太郎さん

岡本欣也さん、泉田岳さん

岩田純平さん

小川祐人さん、小林桃子さん

松田脩さん、冨田孝行さん

三島邦彦さん

山崎隆明さん

北恭子さん、小西慶さん、三浦慎也さん

鳥巣智行さん

姉川伊織さん、太田文也さん、並木万依さん、

磯島拓矢さん、今井政広さん、諸橋秀明さん、姉崎真歩さん

姉川伊織さん、嶋崎仁美さん、泉田岳さん
いよいよTCCグランプリの表彰です。

早坂尚樹さん、栗田雅俊さん
プレゼンターは谷山雅計会長が務めます。
そして、グランプリ広告主を代表して、
ご来賓の花王株式会社、野原聡さんからご祝辞を頂戴しました。
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花王株式会社 ヘルスビューティー事業部門
ヘアケア事業部ブランドマネジャー
野原聡様
栗田さん、そして早坂さん、本当におめでとうございます。
私はブランドマーケティングに携わって19年ほど経ちます。
「アタック」や「ビオレ」、「キュレル」など、
いろいろなブランドを担当して、
今は「メリット」を含むヘアケアのビジネスをやっております。
その中でずっと大切にしてきたことは、
「ブランドにいかにアイコニックなアセット(資産)を作ることができるか」、
そして「そこにしっかり価値を溜めていけるか」ということです。
私はコロナ禍の最中、ずっと中国・上海に赴任しておりました。
同じようにブランドを作っていて、言語の問題もあって、
「ブランドのアイコンとなるアセットを、
バーバル(言語的)なもので作るのは難しいな」という限界を感じていました。
ノンバーバルのものの方が、
価値を貯めていきやすいんじゃないかな、と思っていたんです。
そういった中で日本に戻ってきて、
メリットの今回のオリエンを、お二人のチームにさせていただきました。
そのオリエンはシンプルなもので、
家族シャンプーと言われていた「メリット」を
家族の「愛」を感じるようなシャンプーにしたい、というものでした。
お二人のチームから、まず最初にアニメーションの絵が出てきて、
最後にふっと自然と入ってきた。「家族と愛とメリット」というコピー。
これはもう、あまり議論もせず「これですね、これですね」という
感じで決まっていったのを覚えています。
それと同時に、出てきたものは、ボディコピーが入った交通広告でした。
あれだけ「ノンバーバルなものの方がいい」と言って、
自分でもそう作ってきたんですけれど、
そのコピーを見た瞬間に、その場で泣いてしまいまして。
広告のプレゼンをされて泣いたことは初めてなんですけれど、
本当に泣いてしまいまして。そしたら、隣にいたメンバーも泣いていて……。
それ以来、メリットの広告、いろいろなコピーの提案があり、
毎回「泣けたら承認」ということでやらせていただいてきました(笑)
先日、花王の採用活動で来られた方に
「志望動機は何ですか?」とお聞きしたところ、
「メリットの広告のコピーを読んだからです。そこに感動して、花王を受けました」
と言われました。まさにそのことに私自身も感動し、それと同時に、
「コピーというものが生活者の中に浸透して、アイコニックなアセットに
今まさになっていっているんだな」ということを、本当に強く実感しました。
日本に帰ってきて、こうした仕事をさせていただいて、
改めて「言葉の強さ、コピーの強さ」というものを感じた次第でございます。
提案していただいた、クリエイティブチームの栗田さん、早坂さん、
そのチームメンバーには本当に感謝したいなと思っております。
お二人のこれからのご活躍を、これからも期待しております。
本日は本当におめでとうございます。
グランプリ 受賞の言葉:早坂 尚樹 さん
この度は素晴らしい賞を、ありがとうございます。
最近はミームだったり、バズだったりがもてはやされる中で、
グランプリを頂けたのは、アート&コピーの表現を信じてくださった
クライアントさんがいたからだと思っております。
改めて野原さん、花王さん、ありがとうございます。
僕は映画のエンドロールの時間が好きなのですが、
幸いにして、広告業界にはスタッフリストがあります。
世の中は無記名な仕事も多い中、僕らの仕事は「記名性」で
残っていくことが、とても魅力的なことです。
だからその特権とも言えるスタッフリストを、
僕らはもっと大切にすべきなのだと思います。
当然ですが、ひとりで仕事はできません。
メディアも多岐にわたり、ますますチームが大切になってきています。
コピーライターの賞なので、個人賞をいただいていますが、
チームの皆さん、関係会社のみなさんの力があってこその、
受賞だと思っております。ありがとうございます。
しかし、その一方で、少し矛盾しますが、
「チームの時代」だからといって、
チームメンバーに甘んじていてはいけないとも思っています。
今回、僕は2番目に名前を連ねさせていただいて、コピーを書いておりますが、
コピーライターというのは、チームのエースであるべきです。
だから、次は何年かかるかわからないですけど、自分がチームのエースとして
この舞台に戻ってこられたらと思っています。
そして、その時は、今回導いていただいたように
今度は僕が仲間や後輩を連れて来られたらいいなと思っております。
そうやって、受け継がれてきた広告業界のバトンをつないでいきたいです。
すてきな賞は、入社以来教えていただいたすべての先輩方のおかげです。
ありがとうございました。
グランプリ 受賞の言葉:栗田 雅俊さん
野原さん、素晴らしいご挨拶をありがとうございました。
この仕事は、野原さんと初めてお会いして、僕も初めての花王さんで、
いろんな「初めまして」から始まったんですけども、
企画を決めてくださって、途中のご判断もすべてスピーディーにやっていただいて、
本当に野原さんと花王の皆さんのおかげだと思っています。
そして「メリット」というブランドが50年以上積み重ねてきた歴史が
あったからこそ、その肩にちょっとだけ載せてもらえたのかな、
と思っています。ありがとうございます。
ちょっとだけ個人的な話をします。
この原稿は、僕にとってすごく個人的な仕事でもあったなと感じています。
僕自身、子育てをしていて、
この仕事をやる時に、自分の思い出、記憶の棚卸しをしました。
かなり個人的なことを書いて、文章とかテンションとか自分まる出しで、
多少気恥ずかしいところもあったんです。
ところが、世に出た後に、いろいろな方が声をかけてくださって
「あの広告、見たよ」と言ってくださったんですが
なぜか皆さん、「これは俺の話だ」「私の話だ」とおっしゃるんですね。
「いや、これは僕自身の体験を書いちゃったんです」と返すんですけど、
「いやいや、これは自分の話だ、ありがとう」
というテンションでおっしゃるんです。
それで思ったのは、すごく個人的であればあるほど、
誰かの「個人性」みたいなものと共鳴して、
つながれることがあるんだな、
むしろ個人的である方が良かったんだなということでした。
もうひとついいことは、個人的であると、嘘をつかないですみます。
「最終回は気づかないうちに終わっていく」というコピーを書きましたが、
実は原稿に取り組んでいる時に、
子どもが「シャンプーは明日から自分でやる」って言い出したんですね。
なのでその時、すごく個人的で実感値があったので、
「これは嘘じゃないぞ」と書いているときから確信が持てました。
嘘をつかないと、強さが得られますし、優しくなれます。
優しくなれるということは今、大事なことなんじゃないかとも思います。
なのでこれからも、
個人的でありたい、個人的なものでつながっていきたいなと思いました。
色々ある時代ですけども、個人的であること、
そしてコピーライティングという技術を、
すごく頑張っていこうと改めて思いました。
この原稿は、本当にプリミティブな広告で、絵と文だけでできています。
SNSなどを狙って書いたものではありませんでした。
でもすごくいろんな方がシェアしてくださり、話題にしてくださいました。
広告も多様化している中で、自分自身、迷うところもあって
広告表現プラスオンで、
何かしくみや構造を考えなければと思ったりもしたんですけども、
そんなことをしなくても
「お前はコピーを書いていればいんだ」と言われたような気がして。
これまで頑張ってきたことが先につながってたんだ、
コピー書いていれば良かったんだ、と思いました。
その安心と、ある種の使命感と、「これからも頑張るぞ」という気持ちと。
いろんなものをいただいた、ありがたい仕事だったなと思っています。
もちろん、自分ひとりの力ではなく、先ほど早坂くんも言っていましたけれども、
たくさんの方が助けてくださったおかげで生まれたものです。
本当にありがとうございました。

TCCグランプリ 花王メリット「家族と愛とメリット」
